ベクトル解析 [2] - ∇(ナブラ) とその諸公式、計算練習

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 ベクトルの微分・積分は、それぞれ全く今まで触れたことのない新しい演算が多数登場しますが、ここではそのうち "微分" の新しい演算子である、∇ (ナブラ) について、どのように計算すべきか紹介します。なお、ここではどのように計算したらよいか、そして覚えるべき公式は何か (本当に覚えることはそれほど多くない) だけに焦点を当てていきます。
 ベクトル解析というと、まず思い浮かべるのが変な記号を使って訳の分からない計算をしているというイメージです。この計算の時点で怖じ気づいてしまうというのは、やっている計算が一体どういう意味を持っているのか検討する以前の問題です。ですから、その恐怖心を少しでも緩和しようというのがこの記事の目的です。
 ベクトル解析の習得というのは言ってしまえばただの計算手法の習得にすぎません。これはレベルにもよるのだと思いますが、教科書に載っている計算が理解したいだけなら計算手法さえ知ることができれば十分です。この意味で、こういったものは「数学」ではなく「算数」です。
 より詳しく、習得したい場合は、この記事よりも以下の書籍がおすすめです。
1. ベクトル解析 (工学基礎演習シリーズ2), H.P.スウ著
2. スバラシク実力がつくと評判のベクトル解析キャンパス・ゼミ, 馬場 敬之著
3. ベクトル解析 (マグロウヒル大学演習), Murray R. Spiegel
この記事では極座標や円筒座標におけるナブラの扱いを書いていません。これらは全て [7] にまとめましたのでそちらをご覧下さい。ただし、面積分および発散の一般的な定義を説明無しに用いているので、少なくとも [4] の内容は習得していることを前提とします。

微分演算子$\nabla$の定義

 演算子$\nabla$を、次のように定義します。
$$\nabla = \frac{\partial}{\partial x} \mathbf{i} + \frac{\partial}{\partial y} \mathbf{j} + \frac{\partial}{\partial z} \mathbf{k}$$
これはベクトルの微分演算子といい、単体では意味を持ちません。この右に何らかの関数を持ってくることではじめて意味を持つものです。微分方程式では d/dt を D などと置き換えたりしましたが、そのようなものという認識でよいと思います。上で定義した演算子 ∇ には名前がついており、ナブラ (nabla) といいます。昔、このような形をしたナブラという楽器があったとかないとかでついたらしいのですが詳しいことは分かりません。
 定義は、定義ですからどうしようもありません。これは素直にそういうものなんだと受け止めるしかないのです。いきなり見た目が難しそうだからといって、これを覚えることを放棄しては、スタート地点に付く以前の問題です。残念ですが理解どうのこうのの前に、これはスタート始点として暗記しなければなりません。
 さて、実際に種々の計算を開始する前に注目しておきたいのが、これは形式的にはベクトルですから、今まで考えてきたベクトル演算をこれにも適用することができる、という点です。具体的には、これとスカラー関数 $\phi(x,y,z)$ とのスカラー積 (のようなもの) である $\nabla \phi$、そしてベクトル関数 $\mathbf{f}(x,y,z)$ との内積 (のようなもの) である $\nabla \cdot \mathbf{f}$、外積 (のようなもの) の $\nabla \times \mathbf{f}$、合計 3 種類を考えることができます。なお、ナブラは左には作用しません。常に右にあるものにしか作用しないという決まりがあるのでしつこいようですが勘違いしないようにしましょう。それは、たとえば $df(x)/dx$ だって、 $f(x) d/dt$ では何も意味を持ってないのと一緒です。微分の演算子と同じく、ナブラは順序に敏感です $\nabla \cdot \mathbf{f}$ には意味があっても、$\mathbf{f} \cdot \nabla$ にはそれだけでは何も意味がありません。これらのことに注意しながら、その三つの演算はどういうふうに計算するのか、見ていきます。

勾配・発散・回転

 では、早速その三種類を見てみます。$\nabla$ を、形式的にスカラー積のようにして作用させたものは勾配 (gradient) といいます。すなわち、スカラー関数 $\phi(x,y,z)$ について、
$$\nabla \phi = \mathrm{grad}{\phi} = \frac{\partial \phi}{\partial x} \mathbf{i} + \frac{\partial \phi}{\partial y} \mathbf{j} + \frac{\partial \phi}{\partial z} \mathbf{k}$$
と定義します。見て分かるように、これによって、スカラー関数からベクトルが作り出されます。もちろん微分から作られたベクトルなので、向きは場所によって変動していくものです。スカラー場 (空間のいろんな点にいろんな値が連続的に分布する場) を微分して得るベクトルなので、その場の変化の急さをどうにかしてベクトル化しているとは思いますが、具体的にどういう意味があるかは後回しにします (一言で言えば、 "その点から最も値が変化するのはどの向きか" を表すのが勾配ですが、詳細は [4] に記載してあります)。
 次に、形式的に内積のようにして作用させたものを 発散 (divergence) といいます。形式的に内積なので、勾配はスカラー関数に作用したのに対し、発散はベクトル関数にのみ作用させることが可能です。
$$\nabla \cdot \mathbf{f} = \mathrm{div}{\mathbf{f}} = \frac{\partial f_1}{\partial x} + \frac{\partial f_2}{\partial y} + \frac{\partial f_3}{\partial z}$$
そして、忘れてはならないのが、発散はこのようにスカラー量になっているということです。発散で得られるものはベクトルではありません。慣れないうちは、これらがベクトルかスカラーか混同する可能性が非常に高いため、この点については常に気を配る必要があります。
 もう一つ、形式的に外積のようにして作用させたものは回転またはカール (rotation, curl)といいます。これも「外積」なので、ベクトル関数にしか作用させることができません。
$$\nabla \times \mathbf{f} = \mathrm{rot}\mathbf{f} = \mathrm{curl}\mathbf{f} = \left| \begin{array}{ccc} \mathbf{i} & \mathbf{j} & \mathbf{k} \\ \frac{\partial}{\partial x} & \frac{\partial}{\partial y} & \frac{\partial}{\partial z} \\ f_1 & f_2 & f_3 \end{array} \right|$$
外国の本には回転よりもカールという記述の方が多く見られます。もちろんこれは外積なので、ベクトルができあがります。
 繰り返し、初学者として気をつけておくべき点を書いておきますと、勾配と回転からできるものはベクトル、発散からできるものはスカラーです。応用として回転の回転だとか勾配の回転なども考えることになりますが、上のことを強く意識していれば、たとえば "回転の回転" は存在するが、"発散の発散" や、"勾配の勾配" などは存在しないことには気づくでしょう。別に、ナブラ自体が "ベクトル (のようなもの)" であることさえ分かっていれば、例えば発散はスカラーだのそういうことは改めて覚えるほどのことでもありません。上の 3 式は全部公式のようなものとして暗記する必要はないのです。$\nabla$ 自体はまあ新しいものだから定義を暗記するとして、これはベクトルみたいなものだからスカラー積、内積、外積を考えてみました、というだけのことです。

勾配・発散・回転の諸公式

 基本的に $\nabla$ は微分演算子であるため、各 $x,y,z$ 成分で分けて考えれば、合成関数の微分、積の微分といった公式がほとんどそのまま成り立ちます。また、$\nabla$ はベクトルの一種でもあるので、やはり今まで見てきたようなベクトルの公式もほとんどそのまま成り立ちます。勾配・発散・回転の諸公式は、全ての成分について個別に計算すれば証明は容易ですが、それは全く苦労に見合いませんし、覚えることもできません。
 ナブラの計算は難しそうな計算に見えますが、結局これはベクトルと微分の合わせ技にすぎないのです。ベクトルの公式や微分の公式はだいたい流用できるのです。この考えに基づいて計算すれば、あまり成分を出すことなく、記号のままで議論することができるばかりか、覚えるとが減り、いいこと尽くしです。ナブラは微分演算子のように順序に敏感ということさえ気にとどめておけば、これから出てくるいくつもの公式は、ほとんど暗記する必要がありません。
 そのような概論的なことばかり述べていても仕方が無いので、実際に覚える必要がないというのはどういうことか、見てみます。たとえば、
$$\nabla \cdot \left( \phi \mathbf{f} \right) = \mathbf{f}\cdot \nabla \phi + \phi \nabla \cdot \mathbf{f}$$
というような公式は、見ているだけでは覚えられる気がいっこうにしてきませんが、$\nabla$ は微分演算子なので、$d/dt$ のようなものだとして見れば、合成関数の微分と見ることもできるでしょう。そこで、
$$\nabla \cdot \left( \phi \mathbf{f} \right) =\nabla_{\phi} \cdot \left( \phi \mathbf{f} \right) + \nabla_{\mathbf{f}} \cdot \left( \phi \mathbf{f} \right) $$
という風に考えています。右式における $\nabla$ の下付文字は、$\nabla$ が作用するのはそちらの方だけだ、ということを示しています。普通の微分と一緒ですね。ただこの方法も成分を出さなくてよくて見通しがいい議論が出来る代わりに、ただの微分よりも注意が必要で、まず第一項は $\phi$ に作用するとのことですが、当然スカラー関数 $\phi$ に $\nabla$ が作用できるのは $\mathrm{grad}$ としてだけなので、$\nabla \phi$ という風にくっつきます。その結果、余った内積のドットは $\mathbf{f}$ と $\nabla \phi$ でとられていることになります。
 右の項は、$\mathbf{f}$ に作用しますが、内積の形式になっているのが分かるとおり、ベクトルに作用する場合は $\mathrm{div}$ か $\mathrm{curl}$ でないと作用できないので、ここでは内積の形式ですから $\mathrm{div}$ として $\nabla \cdot \mathbf{f}$ とします。余った $\phi$ はスカラーなので、係数のように前に出します。何度も書いているとおり、ナブラは右にあるものに作用するため、右に置いて $\nabla \cdot \mathbf{f} \phi$ と書いてしまうと誤解を与えます。以上のようにして、
$$\nabla \cdot \left( \phi \mathbf{f} \right) = \mathbf{f}\cdot \nabla \phi + \phi \nabla \cdot \mathbf{f}$$
という公式を得ます。結局、各成分ともに合成関数の微分になるので、これは成分ごとに計算しても一致した結果が得られます。
 この調子でいけば、他にも
$$\nabla \times \left( \phi \mathbf{f} \right) = \nabla \phi \times \mathbf{f} + \phi \nabla \times \mathbf{f}$$
といった公式は、上と全く同じような考えで容易に示すことができます。他のパターンとしては、
$$\begin{align}\nabla \cdot \left( \mathbf{f} \times \mathbf{g} \right) &= \nabla_{\mathbf{f}} \cdot \left( \mathbf{f}\times \mathbf{g} \right) + \nabla_{\mathbf{g}} \cdot \left( \mathbf{f}\times \mathbf{g} \right) \\ &= \mathbf{g} \cdot \left( \nabla \times \mathbf{f} \right) - \mathbf{f} \cdot \left( \nabla \times \mathbf{g} \right)\end{align}$$
このようなものもありますが、これに関しては一行目と二行目の間で何が起こっているのかよく分からないかもしれません。これは、$\mathbf{f}$ にだけどのように作用させたらよいかというと、まず $\nabla$ は自分自身の順序に敏感なのでできるだけ順序自体は変えずにうまくやりたいところです (例 : $\nabla \cdot \mathbf{f} \neq \mathbf{f} \cdot \nabla$)。そこで、この式は形式的にスカラー 3 重積になっているので、"メリーゴーラウンド式" の移動法を試します。$\nabla$ の作用する順序自体は変わっていないので、この法則はそのまま成り立ちます。要するに、イコールの範囲内でうまく $\nabla$ のすぐ右に作用する相手を持ってきたいということで、隣にドットがあるかクロスがあるかは大した問題ではないのです。最初の項は 1 個全部ずらしてやると、最後の式のように変形可能です。右の項は $\mathbf{f}$ と $\mathbf{g}$ のクロスを入れ替えてマイナスにしたあと、メリーゴーラウンド式に移動させて最終的な結果を得ます。このように、ナブラはベクトルでも微分演算子的な側面を持ち合わせているために、順序に関して若干の制約がつきまとうのには注意が必要です。
 他、勾配、発散、回転など、色々組み合わせることも可能ですが、特に押さえておかなければならないのは 0 になる組み合わせです。たとえば、勾配の回転は 0 になります。つまり
$$\nabla \times \left( \nabla \phi \right) = \mathrm{rot}\mathrm{grad}\phi = \mathbf{0}$$
です。これは形式的に $\phi$ をスカラー (関数ではなくただの係数という意味)、$\nabla$ をただのベクトルと見なすことで、$\mathbf{a} \times \mathbf{a}$ というのは 0 ですから、形式的に 0 になるのがわかります。数学的に正しい証明かどうかは置いておいて、このように考えれば覚えることは結構少なくて済みます。このことから、$\mathrm{rot}$ を取ると 0 になるようなベクトルつまり $\nabla \times \mathbf{a} = \mathbf{0}$ である場合、$\mathbf{a}$ は $-\nabla \phi$ (別にマイナスはなくてもいいですが、物理の世界では取り扱いの都合上マイナスが付くのでそうしてあります) と表してもよいことになります。このような $\phi$ は物理の世界ではスカラーポテンシャルと呼ばれ重要視されています。
 もう一つ 0 になる組み合わせに、回転の発散があります。つまり、
$$\nabla \cdot \left( \nabla \times \mathbf{f} \right) = \mathrm{div}\mathrm{rot}\mathbf{f} = 0$$
です。これも、形式的にスカラー 3 重積であり、$\nabla$ をただのベクトルとして見れば、そもそもこれが何らかの大きさを示すのかとかそういうことはおいておいて、この形は同じベクトルが 2 つある、つまり "潰れた平行六面体の体積" ですから、0 になるのがわかります。
 もう一つ組み合わせ系で押さえておかないといけないのは、回転の回転と勾配の発散です。これらは 0 になりません。
$$\begin{align}\nabla \times \left( \nabla \times \mathbf{f} \right) &= \mathrm{rot}\mathrm{rot}\mathbf{f} = \nabla\left(\nabla \cdot \mathbf{f} \right) - \nabla^2 \mathbf{f} \\ &=\mathrm{grad}\mathrm{div}\mathbf{f}-\Delta \mathbf{f}\end{align}$$
これは形式的にベクトル 3 重積なので、やはり公式のとおり進めていきます。注意すべきは、まず間違いなく $\nabla$ は $\mathbf{f}$ に作用しているので、わざと $\mathbf{f}$ に作用するよううまく $\mathbf{f}$ を右に置き換えることです。そうすると必ずこのように出せると思います。成分で計算すると地獄なので思い出すときはこちらのベクトル 3 重積の公式で覚えるといいと思います。
 ここで出てきた $\Delta$ なるものはラプラシアンといい、スカラー関数に作用するラプラシアン $\Delta \phi$ においては勾配の発散 $\nabla \cdot \nabla \phi$ ($\mathrm{div} \mathrm{grad} \phi$) を意味します。要するに各成分 2 回微分の和です。ラプラシアンは $\Delta$ と表記するのが普通のようですが $\nabla$ の 2 乗という見た目でも表記されることがあります。ちなみに、$\Delta \phi = 0$ (ラプラスの方程式) を満たす関数は調和関数と呼ばれています。右辺が 0 でない非同次の偏微分方程式はポアソン方程式という名前になっています。当然 $\nabla \cdot \nabla$ は内積のようなもので、それにスカラー $\nabla$ がかかっているので $\Delta \phi$ はスカラーです。ただ、上の式の$\Delta \mathbf{f}$は、$\mathbf{f}$がスカラーではない、つまり$\mathbf{f} = f_1\mathbf{i}+f_2\mathbf{j}+f_3\mathbf{k}$に$\Delta$を作用するという意味なので、より詳細に書けば
$$\Delta \mathbf{f} = \Delta f_1 \mathbf{i} + \Delta f_2 \mathbf{j} + \Delta f_3 \mathbf{k} $$
であることに注意するべきです。

位置ベクトルと勾配

 位置ベクトル関数の勾配・発散・回転各種は物理とも密接に関わっているため非常に重要です。位置ベクトル関数の勾配・発散・回転を考えるだけですでに物理学に応用できそうないくつかの性質を見つけることができます。ベクトル解析を学ばずに力学や電磁気学を学ぶのは、肉のない牛丼を食べるようなものなんですね。
 位置ベクトルの勾配は、位置ベクトルの単位ベクトルとなります。これは残念ながらうまい公式もなにもないので、正直に微分して確かめます。
$$\begin{align}\nabla r &= \nabla \sqrt{x^2+y^2+z^2} \\ &= \frac{\partial}{\partial x} \sqrt{x^2+y^2+z^2} \mathbf{i} + \frac{\partial}{\partial y} \sqrt{x^2+y^2+z^2} \mathbf{j} + \frac{\partial}{\partial z} \sqrt{x^2+y^2+z^2} \mathbf{k} \\ &= \frac{x}{\sqrt{x^2+y^2+z^2}}\mathbf{i} + \frac{y}{\sqrt{x^2+y^2+z^2}}\mathbf{j} + \frac{z}{\sqrt{x^2+y^2+z^2}}\mathbf{k} \\ &= \frac{1}{\sqrt{x^2+y^2+z^2}} \left( x \mathbf{i} + y \mathbf{j} + z \mathbf{k} \right) \\ &= \frac{\mathbf{r}}{r}\end{align} $$
ナブラを使って効率よく計算したい場合覚えておいた方がいい公式がもう一つあって、それは位置ベクトルの大きさ $r$ の関数 $f(r)$ の微分です。各成分ばらせば分かりますが、ナブラにも合成関数の微分が成りたっているのです。すなわち、
$$\nabla f(r) = f'(r) \nabla r$$
です。これもナブラを $d/dx$ と思ったら合成関数の微分そのままなので覚えやすいですよね。これさえ理解しておけばこれ以上勾配の公式は覚えなくても大丈夫です。例えば、$r$ の $n$ 乗の勾配は公式としてよく出てきますが、上のことさえ知っていれば覚える必要は全くありません。実際、
$$\nabla n^r = nr^{n-1}\nabla r = nr^{n-1}\frac{\mathbf{r}}{r}=nr^{n-2}\mathbf{r}$$
ですからね。こんなもの文字だけ見たって覚えられないでしょう。我々がよく知っている "合成関数の微分" がナブラでも成立する・・・だから、どんな関数にナブラを適用したとしても、合成関数の法則を用いるだけ、というわけです。

位置ベクトルと発散

 位置ベクトルの発散は 3 になります。定義さえ知っていれば、これは別に覚えるほどのことでもありません。
$$\nabla \cdot \mathbf{r} = \frac{\partial x}{\partial x} + \frac{\partial y}{\partial y} + \frac{\partial z}{\partial z} = 3$$

位置ベクトルと回転

 位置ベクトルの回転は 0 ベクトルになります。回転は計算が面倒なので、知っておくとよいでしょう。
$$\begin{align}\nabla \times \mathbf{r} &= \left| \begin{array}{ccc} \mathbf{i} & \mathbf{j} & \mathbf{k} \\ \frac{\partial}{\partial x} & \frac{\partial}{\partial y} & \frac{\partial}{\partial z} \\ x & y & z \end{array} \right| \\ &=(0-0)\mathbf{i}+(0-0)\mathbf{j}+(0-0)\mathbf{k}\\ &=0\end{align}$$

まとめ

1. ナブラの定義
$$\nabla = \frac{\partial}{\partial x} \mathbf{i} + \frac{\partial}{\partial y} \mathbf{j} + \frac{\partial}{\partial z} \mathbf{k}$$
2. 勾配・発散・回転の定義
$$\nabla \phi = \mathrm{grad}{\phi} = \frac{\partial \phi}{\partial x} \mathbf{i} + \frac{\partial \phi}{\partial y} \mathbf{j} + \frac{\partial \phi}{\partial z} \mathbf{k}$$
$$\nabla \cdot \mathbf{f} = \mathrm{div}{\mathbf{f}} = \frac{\partial f_1}{\partial x} + \frac{\partial f_2}{\partial y} + \frac{\partial f_3}{\partial z}$$
$$\nabla \times \mathbf{f} = \mathrm{rot}\mathbf{f} = \mathrm{curl}\mathbf{f} = \left| \begin{array}{ccc} \mathbf{i} & \mathbf{j} & \mathbf{k} \\ \frac{\partial}{\partial x} & \frac{\partial}{\partial y} & \frac{\partial}{\partial z} \\ f_1 & f_2 & f_3 \end{array} \right|$$
3. ナブラの積の微分法則
$$\nabla \left( \phi \psi \right) = \psi \nabla \phi + \phi \nabla \psi$$
$$\nabla \cdot \left( \phi \mathbf{f} \right) = \mathbf{f} \cdot \nabla \phi + \phi \nabla \cdot \mathbf{f}$$
$$\nabla \times \left( \phi \mathbf{f} \right) = \nabla \phi \times \mathbf{f} + \phi \nabla \times \mathbf{f}$$
↓と比べてみよう
$$\left( f(x)g(x) \right)' = f'(x)g(x)+f(x)g'(x)$$
4. 0 になる組み合わせ
$$\nabla \times \left( \nabla \phi \right) = \mathrm{rot}\mathrm{grad}\phi = 0$$
$$\nabla \cdot \left( \nabla \times \mathbf{f} \right) = \mathrm{div}\mathrm{rot}\mathbf{f} = \mathbf{0}$$
5. 位置ベクトル、あるいはその大きさに対する勾配・発散・回転
$$\nabla r = \frac{\mathbf{r}}{r} = \hat{\mathbf{r}}$$
$$\nabla r = 3$$
$$\nabla \times \mathbf{r} = \mathbf{0}$$
6. 合成関数の微分法則
$$\nabla f(r) = f'(r) \nabla r$$
$$\nabla r^n = nr^{n-1}\nabla r = nr^{n-1}\frac{\mathbf{r}}{r} = nr^{n-2}\mathbf{r}$$
 下の方は上の方さえ知っていればすぐ出せるので、覚える必要はありません。なお、上の方は位置 $r=\sqrt{x^2+y^2+z^2}$ でなくても、一般の関数 $u(x,y,z)$ に対して成り立ちます。

計算練習 1. 逆二乗則に従うベクトル場の発散

 これまでの応用としてやや重要な例を見てみます。
003.png
を見てみましょう。これは逆二乗則に従うベクトル場です。r の上に ^ がついているのは r ハットと読み、その方向を向いている単位ベクトルであることを表しています。k0は任意の定数ですね。ですから、これの値によっては万有引力ですし、クーロンの法則の式そのものになるわけです。この二つに共通する面白い性質として、発散を取ると 0 になるという性質があります。答えから書いてしまったらあまり面白くないですが、これまでに見てきた計算規則をうまく適用しながら、0 になることを確認してみましょう。
004.png
二行目は、発散の積の法則で二つの項にバラしています。そして左の項はすぐ上でみた合成関数の微分、右は r ベクトルの発散 = 3 であることをそのまま用いていますね。そのあとはまあとんとん病死ですが、最後に r・r が出てきます。これは自分自身の内積ですから r の二乗になることを注意しておけば、最終的に左、右とも項が異符号となるだけで、合わせると 0 になることが確認できます。
 すごく丁寧に書けばこういう感じですが、実際はもっと短くて済むでしょう。こんなのいちいち成分ごとにやってたら地獄ですので、ちゃんとナブラの計算規則は身につけておきましょう。この結果は電磁気学ではガウスの法則を導出するときに使うことになります。

計算練習 2. グリーンの第二恒等式

005.png
 奇妙な式ではありますがこれはグリーンの第二恒等式と呼ばれる積分定理の一つで出てくる式です。本当は左辺に面積分、右辺に体積分という演算がかかっているのですがここではそういうのはナシにして、その中身だけ注目することにしましょう。これも大して難しくないので確認してみましょう。
006.png
ここまで来るとただの記号遊びにしか見えませんが、こういうのも迷わず計算できるようになれば、それなりにナブラの使い方は身についたと思ってもよいと思います。

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