ベクトル解析[4] - スカラー面積分 / 勾配・発散の意味

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[更新情報]
2011/06/12 : 全体の微修正
2010/11/07 : 今見直したら微妙だと思ったので面積分に関する記述を大幅に直しました。
2010/12/14 : 単位法線ベクトルに関して補足
 
 前回は線積分という少し今までと違う積分の概念を紹介しましたが、線積分の他に、ベクトル解析をやっていて避けて通れない積分に面積分があります。これらもそうですし、いままでの普通の積分もそうですが、積分という言葉を聞いたとき、なんでもすぐに "面積" や "体積" という印象で理解しようとするのとするのはやめにしたほうがよいです。特に前回の線積分や今回の面積分には面積と体積という意味はほとんど含まれていないため (といっても、積分するベクトル場のとりかた次第ではそういった意味づけも可能ですが、あくまで一般論として)、積分を "ある量を微小な区間に分割して集計したもの" と捉えるのがよいでしょう。

(スカラー) 面積分の定義

 面積分も線積分と同じく実はいくつかパターンがあるのですが、実用上最も重要なのがスカラー面積分と言われるもので、これを単に面積分 (Surface integral) と呼びます。式では、
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というように書かれます。上記は両方とも同じ表現です。まずは、表現方法のおさらいですね。
 左式において、S は任意の曲面 (積分範囲)、f はベクトル場、dS は微小面素、n は曲面上の微小面素に対する単位法線ベクトルです (通常曲面に単位法線ベクトルは 2 つ存在するが、通常外向きを選ぶ、しかし、実はこのことはあまり気にする必要はない)。
 
右式においては、dS は微小面素ベクトルを指します。微小面素ベクトルとは、曲面への単位法線ベクトルに面積 (微小面素) の重みをつけたものです。
 しかし、初めてこれを見ても、そんな記号の定義をそれぞれ聞いただけでは何も得られることがないと思います。次に、結局面積分がしていることは何かについて検討します。

面積分とは何者なのか

 積分記号は、こう考えることもできます。特定の微小要素の足し合わせの極限なのであって、積分になるまえは、インテグラルはシグマ、d なんとか (微小要素) は Δ なんとか に化けるのです。要するに、区分求積みたいなものです。よく "積分は面積" とはいいますが、結局あれはインテグラルのなかみの f(x) dx がもともと f(x) Δx というふうになっていて (Δx は有限の微小な長さ) 、関数を横に沢山分割した結果それぞれの底辺 (Δx) かける高さ f(x) を足し合わせてるだけです。で最後に、Δx が有限のままだとデジタル的な誤差が出てしまうので連続量に直すために Δx → 0 のもとで dx という形の表現をとっているだけなのです。そう考えれば、どうやら面積分は
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の足し合わせの極限をとったものであるといえそうです。面積分の本質的な量はこれですが、これには、「ΔS の面積を流れる "流束"」 という物理的イメージを持たせることができます。形式的には、ベクトル場 f との内積を取っています。なので、あらゆる場所に矢印が存在しています。ここで、面積分を取りたい曲面上の 1 点に微小面積を考えると、そこにもベクトル場によるその点に対応するベクトルがあります。そこで、曲面上の微小面素を拡大してみましょう。
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どうせ極限を取ったら微小面素も点みたいなものですから、簡単のため微小面素は点のようなもので、1 つの微小面素に 1 つのベクトル場 f によるベクトルが対応していたとして扱います。すると、上のような図が書けます。では、ここにおける
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とは一体何なのでしょうか。いまここで、先に述べたとおり、"流束" というものを考えます。このベクトルを "流れ" として扱うのですが、その具体的な方法はこうです。
 問題にした微小面素の表面を直交する方向に、大きさ 1 のベクトルが貫いている状態を「1 本相当の "流れ" が流出した」と考えるのです。逆の方向を向いている場合は、入ってきたと考えます。もし、微小面素と直交する方向に、直に大きさ k のベクトルが貫いていたら、k 本相当の流れが流出したという風に見なします。すると、面積分とは、「この "流れ" が、問題にしている曲面上で、全体としてどれだけ出入りしたのか」を計算しているのだという意味を与えることができます。
 この考えをもとに、もう少し話を拡張します。その点のベクトル場によるベクトル f は、必ずしも曲面と直交しているとは限りません。たとえば、ある点において、それが微小面素と平行なベクトルだった場合、これはさすがに "微小面素をベクトルが貫く" とはいえないでしょう。真上から紙に鉛筆をさそうとしていたら、"あなたは紙を貫こうとしている" と誰もがいいますが、真横から鉛筆をさそうとしても (そもそもこの場合さすとは言わないが・・・) "あなたは紙を貫こうとしている" とは誰もいいません。
 ここで、その貫くというのにも重みをつけなければならない、という話になってきます。では、今まで我々が獲得してきた概念で、うまく重みをつけられないでしょうか?もし、つけるとするならば、"角度" でつけるのが妥当な話ですよね。単位法線ベクトルと平行なら 100%、垂直なら 0、ということはこれは、角度を θ としたとき cosθ で重みをつけるとちょうどよいのではないでしょうか。となると、平行ならば |f||n| = |f| 本貫いたということですが、もし θ で傾いて貫いているなら |f||n|cosθ 本貫いたというべきで、すなわち、これは上で見てきた f・n そのものなのです。したがって、これを使えば局所的に平面と見なせるまでに拡大した場合、一体何本の流束がここを通っていますか、というのを数値化したことになるのです。あとは簡単で、じゃあ全ての場所でこれを集計すればいい、という話になります。それが面積分の基本的なアイデアです。
 それはすなわち、定義通りにすれば微小面積を通る流束
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の領域 S にわたる総和を意味しますから、極限を取れば、
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ということになります。面積分は結局のところ "曲面に出入りする流れの総量を集計している" のですね。
 面積分の表現については、左のものがわかりやすいので多用されますが、右のように書かれることもあります。微小面素に単位法線ベクトルがかかったものと dS ベクトルは先ほども述べたように、微小面素というスカラーに単位法線ベクトルをかけて dS ベクトルと定義したか分けて書いたかの違いだけなのでもはや等しいことは示すまでもないですが、興味がある場合は念のため一致することを数学的に調べましょう。
 微小面積要素ベクトル dS は、微小面積を持ちこれらに直交するベクトルとして定義されます。すなわち、[1] の話題より 曲面 S のベクトル媒介方程式を r(u, v) とすれば、
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となります。これはまあ定義なので覚えるしかありません。ここで、その大きさ dS と、単位法線ベクトルを求めると、
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となります。以上の定義から、dSベクトル = ndS となり、面積分の表現はどちらでもよいことがわかります。
 ここで注意してほしいのが、微小面素ベクトルは別に面積のような、線でないものがベクトルになった、というわけではないんですね。ただベクトルに面積の重みがついたというだけなのです。それを面倒だから f・dS としたか、わかりやすさを求めて f・ndS とするか、好みの違いだけなんですね。ちなみに area の略で dS を da と表現する場合もあります。

面積分には何が必要か

 次に、大体何をやっているか印象を持ったところでどうやって計算すればいいのかという話になりますが、面積分は線積分とは違って計算が非常に煩雑です。1 問だけでノート 1 ページ持って行かれることもざらにあります。しかし、やはりワンパターンなので、手順が多いというだけですから、慎重にいけば迷うことはありません。
 面積分に必要なものははっきりしています。"曲面の積分領域をどうやって具体的に表現するか (私たちは dxdy といったような 2 重積分でしか、具体的に計算する方法を知らない)"、"曲面の任意の点における単位法線ベクトル n は点によって変わるものだが、具体的に計算するにはこのベクトル n を何らかの形で x, y, z の式に修正しなくてはいけない、ではどのように表現すればよいのか" の 2 つです。この 2 つは、順番に紹介していきましょう。

積分領域が曲面なら、計算できるように平面に矯正しよう

 まず、前者ですが、線積分もそうであったように、結局我々の知っている積分方法に帰着させるのが一番やりやすいやり方です。曲面に関する領域の積分ですから、やはりそこは 2 重積分に持って行きたいところ。そこで、便利なことに、実は、dS を dxdy (あるいは dydz, dzdx) に変換する公式が存在します。ベクトル解析を取り扱う授業でその公式について触れない授業は存在しないといってもいいでしょう。それだけ計算上の重要度は高いものですが、式の前にそれが出てくる経緯から入ります。
 まず、曲がりを考慮しなくていいくらいに小さい細分までズームしたとします。そうすると dS が作る領域はただの四角形ですが、ななめを向いています。
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すると、上の図のような関係となります。四角形に細分を取るのは微分積分学の考え方からして問題ないのですが、この場合はその四角形は必ずななめに傾ける必要があります。ズームして曲がりを無視することは自分の視点が変化しただけのことであり元の領域には何の影響も及ぼしません。しかし、勝手に傾きを無視して平らにしてしまうことは元の領域を自分の都合で回転させてしまったということであり、明らかに元の状態と等しくなることができません。ただの二重積分と違って積分領域は平面ではなく任意曲面なのです、そこを意識しなければなりません。したがって、ある角度で傾いているという状況設定は絶対に必要になります (くどいと思いますが一応書きました)。
 確かにこの図はそうなっているが、本当にそんな都合よく dS をとってもいいのか不安です。そこは私も疑問に思ったのですが、個人的な理解では、微分積分学によれば、細分は基本的に取り方によらず一定値に収束しますので (これについての詳細は、相当突っ込んだ微分積分の本、あるいは授業でないと触れられない高度な内容なので省略します。普通の教科書ではこのことすら書いてないか軽くそうだよということが載っているだけですが、それでも数学的な教養として知っておくだけでお得だと思います)、それを逆手にとって、我々がよく知っている dxdy にぴったりあうような細分 dS の取り方 (ちょうど上の図のような取り方) をすればいいではないか、と考えれば上の図のように出来るだろうと思っています (もしかしたら違うかもしれないので違っていたら連絡ください)。
 このように取れば、図における微小面素 dS は、xy 平面の微小面素 dxdy と射影の関係にあるので、
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が成り立ちます。絶対値は注意しなければなりません。dxdy は面積を意味します。ある小さな領域と、また別のとりかたをした小さな領域同士に関係があるということをいっているのに、その領域がマイナスになったらおかしなことです。負の面積にはなりません。もし絶対値がなければこの負の関係が成り立ってしまう可能性があるのです。射影は cosγ で関係を決定しているため、もし xy 平面より下の空間に微小面素がある場合は面積が負になってしまいます。したがって、これらの関係を述べるときには絶対値をつけることが必要です。なお、n も k も単位ベクトルですから、実際に計算する上では cosγ と表記するより n・k と内積で表現した方がわかりやすいです (これから求める n の z 成分だけ取りだしているという意味合いが式にはっきりと現れるため)。cosγ=n・k なのは、n も k も単位ベクトルですから、n・k=nとkの成す角の余弦となります。それを上では γ とおいていますので、やはり式が成り立ちます。
 なかなか面積の射影のイメージがつかみづらい場合は、上の図ではわざとわかりやすいパターンで微小面素を持ってきたので、それで考えてみてください。上の微小面素が y 軸に平行な線が無数に x 方向に並んで出来ているとします。この微小面素と y 軸がなす角度はよく見たら γ に等しいことが分かります。したがって、1 本 1 本 cosγ によって線を寝かせれば微小面素が射影と一致する様子が分かるはずです。
 以上から、dS と dxdy について、
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であることが分かりました。また、これにより、曲面 S の領域は、xy 平面への S の射影 R に移されます。これは、微小面素 dS を一つ一つ xy 平面への射影 dxdy に変換していくことを考えれば、容易に想像がつきますね。これで、完全にただの 2 重積分へと変換できたというわけです。したがって、
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が成立します。上は、xy 平面に射影したときの式です。当然導出方法を見てきたら分かるように、yz 平面に射影するなら上の dxdy → dydz ですし、n・k = n・i です。zx 平面も同様です。とにかくこれらは式を覚えるよりもなぜ曲面を各平面への射影で済ませてよいのか、そのイメージを図とともに理解することが重要です。それさえ押さえられたら上の式は覚えなくても自然と頭の中から必要に応じたものが出てきます。
 これにより、2 重積分として面積分が計算できるようになりましたが、最後に単位法線ベクトル n をどのように表現したらいいかという課題が残っています。これは次に書きます。

勾配と単位法線ベクトルとの関係

 [2010.12.14 : 補足] 今まではちゃんと成分を計算して単位法線ベクトルと gradΦ/|gradΦ| が等しいことを示しましたがもっと直感的に理解することも出来ます。等位曲面上では gradΦ・dr = dΦ は、等位というくらいですから当然 Φ の値が動くはずもなく dΦ = 0 です。となると、gradΦ・dr = 0 ですよね。dr は等位曲面上の微小変位を表しています。ということは、等位曲面上で常に微小変位 (ちょうど等位曲面の接平面向きベクトルでもある) と gradΦ の内積が 0 なのですから接平面と gradΦ は直交します。すなわち、等位曲面 Φ=c と、その勾配 gradΦ は直交しており、gradΦ は等位曲面の法線ベクトルであることがわかります。ですから、その大きさで割れば単位法線ベクトルは gradΦ/|gradΦ| と求まります。もし成分でちゃんと確認したい場合は以前書いてあった内容もそのまま置いておきますので参考までに。
 通常問題として解かされるものでは、ほぼ曲面 S が φ(x,y,z)=0 で表現されます。なぜ陰関数形式かというと、z=f(x,y) で表示するよりも多様な曲面の表現が出来るからですね。より一般的な曲面の表示というわけです。もし、曲面のベクトル関数が、r(u,v) の形で表現されているならば単位法線ベクトルの表現は、このページの上に書いたように、すでに分かっています。ここを出発点として、どのように φ(x,y,z)=0 曲面上で単位法線ベクトルを求めればよいのか調べてみましょう。
 いまここで、φ(x,y,z) =0 において、z が x,y による陰関数表示であると考えます。独立変数 2 つで曲面ですから、仮に z=f(x,y) と綺麗に表すことができなくても、1 つは従属変数ということなんですね。この φ について、全微分を考えると、
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です。一方、位置ベクトル r について、u, v ではなくて x, y が独立変数で、z は従属変数ですから、
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です (z=z(x,y)としたほうがいいかもしれません)。今回これが曲面の軌跡を描きますので、単位法線ベクトルの式にあてはめると、z が従属変数なので
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を求めたいですね。そこで、そのまま偏微分してそれぞれのベクトルを求めます。
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これを求めるためには、∂z/∂x と ∂z/∂y が必要であることがわかります。しかし、この値は 3 変数の場合の陰関数定理から、求めることが可能です。そもそも、なぜ ∂z/∂x などを陰関数定理を使って φ による表現に直すのか?ということですが、我々は常に φ=0 という陰関数において、z= で表現できる術を知っているわけではないからです。より一般的に単位法線ベクトルを求めよう、ということなんですね。陰関数定理は微分積分学で出てきた定理ですが、公式として覚えるのではなく、イメージで思い出します。イメージさえ分かっていれば、わざわざ本を開いて調べに行かなくても、式を出すことは容易です。まず先ほど出した φ(x,y,z) =0 における全微分
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は、φ=0 であるため、"等位曲面" を表していると考えることが出来ます。このため、φ の変化量は常にこの陰関数においては 0 です。したがって、
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となります。ここで、両辺を形式的に dx、dy で割れば、z は x,y に対する従属変数であることから、偏微分 ∂z/∂x、∂z/∂y になりますが、x,y はそれぞれ独立変数であるためもうお互いで微分すると 0 になります。というわけで、この dφ=0 を dx, dy で形式的に割ると、ただちに以下の 2 式が得られます。
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したがって、求めたかったに ∂z/∂x、∂z/∂y ついて、
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であることが分かりました。これらより、
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となるので、あとは外積を取ればいいだけですね。分数形式のままだとこちらの編集の都合上式のバランスが異常に悪くなるので行列式においては、∂φ/∂z は φz などと記します。
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となりました。したがって、あとはこれの大きさでこれを割れば、単位法線ベクトルが求まることになります。
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ずいぶんと面倒な式変形でしたが、最終的にこうなりました。しかし、これの式の形はどこかで見たことがないですか?特に分子の方ですね。これはまさに、
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そのものです。そして、その大きさが分母に来ています。ですから、結局、φ(x,y,z)=0 の単位法線ベクトルは、
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であることが分かりました。これは重要公式の 1 つです。[2] においては計算方法の紹介しかしませんでしたが、ここで勾配の幾何学的な意味が 1 つ明らかになります。
 φ(x,y,z) における任意の点の勾配 grad φ の方向は、その陰関数 φ(x,y,z)=c (c は微分すれば消えるから別に 0 でもいい) が示す閉曲面の法線方向を向いているのです。一般に φ(x,y,z) は図示することが出来ませんが、=c とすることで、おのおのの c について曲面が描けます。これを等位曲面といいます。上の表現は言い換えれば、grad φ は次の等位曲面に最も近くなる向きを向いているということもできます。
 これは φ(x,y) に次元を落としても同じことです。φ(x,y)=c とすれば、これは任意の等位曲線を描きます。したがって、平面における勾配 grad φ は、次の等位曲線に最も早く到達する向きを向いていることになります。これは一般に最大傾斜角方向の向きとして説明されますが、簡単にいえば、まず半球を思い浮かべます。それを輪切りにして、わっか 1 つ 1 つを等位曲線だと思い込みます。次の等位曲線に行く方向とは、要するにより高いところにある等位曲線の方向であるわけです。今、二つの任意のわっかを持ってきます、そして、同じ平面に書き込みます。そうすると、内側にある方がより高いところにある等位曲線であることが分かります。したがって、grad φ の向きというのは、この場合は内向きということになります。最大傾斜角とはそういうことです。曲面に拡張すると、直感的に球殻のようなものを思い浮かべて、外側にある方が "次の等位曲面" だから、外向きを向いているというのもイメージできます。もちろん世の中こんな単純な曲線、曲面ばかりではないのですが、もっとも簡単にイメージするならそういった感じでしょう。

結局面積分はどうやって計算するのか?

 さて、面積分を計算するために必要な道具はそろったので、以上をまとめて、計算の手順を見てみます。
 最初に、 xy, yz, zx どの平面に射影するかを決定します。極端な話 xy 上の円盤だった場合は (射影を作る必要もないじゃないかという野暮な突っ込みは置いておいて)、yz, zx 平面に厚さが存在しないので射影を作ることが出来ません。こういう場合は xy 平面上に射影を作るしかないわけです。そのため、場合によってはいつでも xy 平面上へ射影をしていれば OK というわけではないのですね。どの平面に射影すれば一番簡単かは、問題によって判断する必要があるのです。射影が決定したら、
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の表記に直します。もちろん上は xy 平面上への射影のときの式なので、他の場合は自分で直す必要がありますね。
 次に、単位法線ベクトルを求めます。問題となっている曲面について、φ(x,y,z)=0 の形式に直したのち、
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を計算すればいいですね。
 以上が整ったら、そこからはただの 2 重積分の計算ですから、上の式に代入して、計算していくだけです。簡単に言っていますが、すでに述べた通り、この計算はすごく煩雑になることが多いので、気をつけなければなりません。
 また、射影の出来方には細心の注意を払います。たとえば xy 上の半球を思い浮かべましょう。これは、xy 平面上に円を作ればそれが射影です。しかし、射影だけを問題にすると、半円でなくて xy 平面を貫く球も、全く同じ射影になってしまいます。どう考えても面積分の値はこの 2 つの場合違いますよね。このように射影を作ると被ってしまうような曲面を問題にするときは、被らない領域に分割して考えなければなりません。仮にベクトル場 f が r であった場合、放射状に広がりますから、対称性より、球をかぶらないように上下に分割すれば、それ上下どちらかを計算したものの 2 倍すればよいことに気づきます。ただ、こういう問題は 面積分を計算するとノート 1 ページくらい取るのに、Gauss の発散定理という定理を用いると計算どころか積分を使うまでもなく答えが 1 行でしかも即答出来てしまう典型例なので、そういうのを解かされるのはまれだと思った方がよいでしょう。

簡単な例で面積分を計算してみる

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まず、積分領域を図示するところから始まります。この手の平面は、xy, yz, zx 平面上に現れる直線を結んでやれば描くことができます。つまり、z=0 のときの 2x+y=6 を xy 平面に、y=0 のときの 2x+2z=6 を zx 平面に・・・とやっていけばいいのですね。しかも、これは平面ですから、もっと簡単にいえばそれらのときの 3 切片を結べばいいだけであることもわかります。したがって、簡単にそれぞれを 0 にしたときの切片 x=3, y=6, z=3 を結んで、以下のような図を得ます。
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この場合はどの平面に射影してもいいですが、一番慣れ親しんだ xy 平面に射影をとります。射影を取れば、積分領域 S は、以下のような R に変換されます。
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また、与えられた平面は φ(x,y,z)=2x+y+2x-6=0 とできますから、単位法線ベクトルは
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となります。以上から、必要な |n・k| と f・n を求めると、
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です。以上から、面積分を 2 重積分に変換することができ、
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となりました。もうここからは説明不要だと思いますが、2 重積分については、過去私がはじめて 2 重積分を練習したときの例題をいくつか掲載しています
 
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z について、積分領域は 2x+y+2z=6 でしたから、その関係から z= に直して代入します。厳密にはもう積分範囲は変わってしまったので一番最初の f・ndS の段階で内積を取って z を代入するのが正しいのかもしれませんが、そこはお好みと言うことで。
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ですから、
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となります。あとは簡単です。
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という風に答えが求まりました。面積分も手間はかかりますが解法自体はそれほど難しくないのですね。

やや複雑な例で練習してみる

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 問題文からしてなにかわざわざ特殊な例になるように作ったなという感がありますが (積分定理を学べば、やはりわざとそうなるように作ってあることが分かる)、今までの通りに計算してみます。
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と、そんなにごちゃごちゃした形にならなかったので一安心ですね。積分範囲は半球ですから、図示しなくてもいいと思いますが、私の小学生未満の絵力で図示すると、
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ですね。上で述べた、"射影を選ばなければならない" 例はまさにこの例にあたります。これは、xy 平面以外への射影を取ると半球のさらに半分が同じ射影に集まってしまうことになるため、分割して考えなければならなくなって面倒です。ただ、xy 平面に射影をとれば、この曲面の他の部分とかぶることは一切なく、積分範囲 R は半径 a の円になります。
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図示するとこうなります。メロンに見えますが私はメロンが嫌いなのでこの色を選んでしまったことを後悔しています。純粋に甘いわけじゃない、あのメロン特有の独特な風味がどうにも好きになれません。しかし、同じメロンでもウォーターメロンなら大歓迎です。あれは一人で半玉食べられるくらい好きです。
 次に単位法線ベクトルを求めますが、
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なので、
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ですね。必要な内積については、
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なので、これで準備は出来ましたから、実際に積分を計算します。
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ですが、球の方程式より、z= の形に修正できるので、それで代入してやります。
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となりました。領域も R から具体的に出してみると、
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ですね。もうこれは説明不要、積分範囲も円だし、円の方程式の一部が被積分関数に出現していますから、定番の極座標変換を行います。極座標変換のより簡単な例についてはこちら
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右に r がついており、ルートの中が 2 乗なので、うまく置換積分に持って行けるよう工夫します。
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ここまでやって 0 か、と脱力しそうですね。

結局、発散とは何者なのか - 面積分で考える発散の定義

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 これは発散の物理的意味を明らかにする問題でもあります。重積分記号に ○ がついているのは、線積分の場合周回積分であったように、面積分にこれがあると閉曲面における面積分を意味します。球だとか、立方体全面とか、そういうことです。
 これは先に物理的意味を考えておいた方がよいでしょう。発散は、まず、微小立方体の面積分を計算します。これは、最初の方で書いたとおり、その表面から出入りする "流れ" の総量を集計しているのですね。それを微小体積 ΔV で割り、0 の極限を取っているということなのですから、つまり発散とは、1 点に縮小する点 P の周りの微小体積における流出量の極限値という物理的意味を持っていることが分かります。もっと砕いて言えば、"その点では流れが出ているのか、入っているのか、それともどっちも起こっていないのか" を表しているのです。面積分の計算過程を見てきて分かるように、これが正であるとは、"流れが出ている" ということ、負であるとは、"流れが入ってきている" ということを意味します。前者のことを沸き出し、後者のことを吸い込みといい、どちらも起こっていない、つまり div f = 0 である場合はソレノイドといいます。そもそもその沸きだしとか吸い込みって何が出入りしているんだと思うかもしれませんが、これは簡単に言えば理科で習った "電気力線" のようなものを思い浮かべればよいと思います。発散というのは、数学では ∞ までいってしまうもののことをいったように、この "発散" においては、沸きだしとかいうのは無限遠まで行って戻ってこない線の度合い、それで、逆に吸い込みというのは無限遠からやってくる線の度合いだと思えばよいでしょう。出てきたら全部綺麗に戻ってくる場合は・・・それがソレノイドというわけですね。[2] で取り上げた、放射上に広がる r の発散 div r が 3 だったのも、これは全部放射上に広がって線が戻ってこないからそうなっていたわけですね。
 さて、実際に証明を行いますが、上でやったような面積分の例題が出来れば非常に容易に行えます。今回の場合立方体全面、つまり 6 面において面積分を行わなければなりません。これは射影を取ったらかぶってしまう組み合わせが 3 つ出来てしまうことからも分かります。この立方体を、6 つの面の集合体と見るわけですね。そして、今回非常に簡単なのは、それぞれの面が各平面に平行であるため、単位法線ベクトルが ±i, j, k でよいという点がありますね。
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とりあえず図示するとこういうところですね。わざわざ上面に赤い模様をつけたのは、なんだか目の錯覚で 2 通りの見方が出来てしまって頭が混乱しそうだったからです。その正しい方を常に意識していてももう片方が勝手に目の中に浮かび上がってくるのは人体の不思議といえますね。
 まずその上面から面積分を求めてみます。面積分は曲面の外向きの単位法線ベクトルで求めるのが基本ですので、この場合はいうまでもなく n=k になります。上面の面積分を求めてみますと、
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と、このようになります。こんなに簡単に出せる理由については、各面がすでに各平面と平行であるため射影はそのまま dS=dxdy のようになってしまうこと、それと単位法線ベクトルがすべて標準基底、この場合は k だけなので、f の第 3 成分以外はどう表現されるか考えなくてもいいことが挙げられます。f1, f2 は積分場所によって変わっていく関数であるため、通常このように一般的な形では計算することが出来ませんが、今回は z 座標が固定である f3 のみ内積によって取り出される形であるため、値が一定である f3 をどうやって表現するかだけ考えればいいのですね。ただしここで使えるのは、中心座標 P (x,y,z) のみですから、近似的に上面の z 座標を出すときは、点 P における z 方向への変化率 ∂f3/∂z と実際の離れている距離 Δz/2 (中心だから Δz の半分しか移動してないのに注意) をかけあわせた上記のような表現になることがわかります。
 この表記さえ理解できれば残りは全く同じ要領で出せるので、もはや説明不要ですね。ただ底面の場合は単位法線ベクトルが k ではなくて -k になるなどの注意は必要です。とりあえずその底面だけ書いておいてあとは省略します。
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それで、結局全平面について足し合わせると、次のようになります。
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ただし、この Δ とかいう値は 0 への極限を取った "理想状態" でないと成立しない・・・、要するに上はまだ微小区間における近似に過ぎないので、最終的に本当の意味でイコールにさせるためには 0 に持って行く必要があるんですね。ここで ΔxΔyΔz は微小直方体の体積 ΔV を意味しますので、両辺を ΔV で割り、本当の意味でイコールにするため 0 極限をとって理想化すれば、正真正銘
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が成立することがわかりました。実は、勾配も、回転についてもこのような "より一般化しやすい" 定義が存在します。このようなより一般的な定義を与える意味は、まず物理的意味を把握しやすい以前に、どのような座標系でもこの勾配・発散・回転を用いることができる・・・いわゆる "普遍性" というのも含まれています。

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