微分方程式[3] - 定数係数n階線形微分方程式の解法

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 今回は、定数計数の線形微分方程式の主な解法について紹介します。1階微分方程式においては、非線形であっても手計算で簡単に解くことができるものは数多くありましたが、2階以降はそのようにはいかず、手計算で解けるための条件として方程式が線形 (Linear) であることが非常に大きなものとなります。これは、方程式が線形であると解が線形空間をなすため、線形代数の理論に基づいて系統的に方程式を解けることによるものです。

定数係数$n$階線形微分方程式

 $n$階線形微分方程式 ($n$th-Order Linear Differential Equations) とは、
$$g_{n}(x)\frac{d^{n}y}{dx^{n}} + g_{n-1}(x)\frac{d^{n-1}y}{dx^{n-1}} + \cdots + g_{2}(x)\frac{d^{2}y}{dx^{2}} + g_{1}(x)\frac{dy}{dx} + g_{0}(x)y = f(x)$$
のような形で表されるような方程式をいいます。これは最も一般的な形で、文字通り未知関数$y(x)$の$n$階微分$d^{n}y/dx^n$から、一回も微分していないもの$y$までを単純に並べただけのものです。ただし、一般には最高階数の係数を割ったような形
$$\frac{d^{n}y}{dx^{n}} + a_{n-1}(x)\frac{d^{n-1}y}{dx^{n-1}} + \cdots + a_{2}(x)\frac{d^{2}y}{dx^{2}} + a_{1}(x)\frac{dy}{dx} + a_{0}(x)y = f(x)$$
で表現されます。一階の時とは違い、二回以降はこの形を標準形 (Standard Form) と呼びます。
 一般にこの方程式を解くことは困難ですが、特殊な場合に限り、手計算で解くことができます。まず、手計算で簡単に解けるための大きな条件として、左辺の関数 $a_{k}(x)$ が全て定数である、ということが挙げられます。全て定数である場合は、特に「微分方程式は定数係数 (Constant Coefficients) を持つ」といい、今回はこの定数係数$n$階線形微分方程式の解法について取り扱うこととなります。この係数部分が定数でない、つまり変数$x$を含む場合は、ここで紹介する手法では解けないことに注意してください。
 具体的な解法に入る前に、もう少し微分方程式の分類を紹介しなければなりません。標準形において、右辺 $f(x)$ が $0$ であるもの、つまり
$$\frac{d^{n}y}{dx^{n}} + a_{n-1}(x)\frac{d^{n-1}y}{dx^{n-1}} + \cdots + a_{2}(x)\frac{d^{2}y}{dx^{2}} + a_{1}(x)\frac{dy}{dx} + a_{0}(x)y = 0$$
となる方程式を、同次形 (Homogeneous) であるといいます。一階の場合の時の同次形の定義は "一階の場合だけ" だったことに注意が必要です。また、もとの、$f(x)$ がついた式は、非同次形とよび、$f(x)$ のことを非同次項といいます。$f(x)$が$0$でない同次方程式の場合、$x^2$や$\sin{x}$といった、$x$を含む関数はもちろんですが、定数である場合もそれは非同次項 $f(x)$ という扱いなので注意が必要です。
 一階のときとは違い、非同次項があるとないとでは解法の手間がずいぶんと違ってきます。上の同次形によって得られた解のことを同次解 (基本解ともいう) といい、このサイトでは $y_{\mathrm h}$ と表記します。そして、非同次形の解のうち、どれか一つだけでいいので抜き出してきたものを、特解 (Particular Solution) といい、このサイトでは$y_{\mathrm p}$ で表記します。以上を組み合わせると、非同次形の一般解 (General Solution) は、
$$y = y_{\mathrm h} + y_{\mathrm p}$$
という形で与えられ、このように表してもよい原理のことを重ね合わせの原理 (Principle of Superposition) と呼びます。これは、物理モデルでいえば、たとえば電気回路理論の過渡現象において、電流 (あるいは電圧など) の一般解が過渡解 (同次解) と定常解 (特解) の和で与えられたことなどに対応します。この時点でもすでに、同次形ならば同次解を求めるだけでよいが、非同次形ならば $f(x)$ を $0$ として同次形の解を求めたあとでさらに特解を見つけ出さなければならないため、一般解を求めるのに余計な手間がかかることがわかります。

微分演算子 $L$

 微分演算子とは、ベクトル解析で見た $\nabla$ (ナブラ) のように、隣に関数をくっつける、あるいは作用させることではじめて意味を持つ、単項演算子のことです。微分方程式においては、線形の微分演算子 $L$ というものが存在し、
$$L(y) = \frac{d^{n}y}{dx^{n}} + a_{n-1}(x)\frac{d^{n-1}y}{dx^{n-1}} + \cdots + a_{2}(x)\frac{d^{2}y}{dx^{2}} + a_{1}(x)\frac{dy}{dx} + a_{0}(x)y$$
で定義されます。要するに、この $L(y)$ は線形微分方程式の左辺です。この記号を使うことで、線形微分方程式を
$$L(y)=f(x)$$
という簡潔な形で表記することができます。これを用いると、同次形は
$$L(y)=0$$
となります。特に、微分演算子$L$を関数$y(x)$に作用した場合で、階数が2のときは
$$L(y)=\frac{d^2y}{dx^2}+a_{1}(x)\frac{dy}{dx}+a_0(x)y$$
ということになります。

解の重ね合わせの原理

 同次解 $y_{\mathrm h}$ と、特解 $y_{\mathrm p}$ が求まれば、重ね合わせの原理により、微分方程式
$$L(y)=0$$
の一般解は
$$y=y_{\mathrm h}+y_{\mathrm p}$$
で与えられるのでした。すごく都合がいいし、覚えやすい内容ではありますが、あまり自明であるようには見えません。そこで、なぜ重ね合わせの原理が成り立つのか調べてみたいと思います。
 解の重ね合わせの原理が成立することをみるためには、まず微分演算子 $L(y)$ の線形性が証明されなければなりません。線形性とは、スカラー倍と和の公理が成立することをいいますので、つまり、
$$L\left( k_1y_1+k_2y_2 \right) = k_1 L\left( y_1 \right) + k_2L\left( y_2 \right)$$
を証明すれば事足ります。普通別々に証明すると思いますが、ここでは端折ってスカラー倍と和の公理を一つの式にまとめました。このことを証明するのは容易です。微分という演算が線形性を持つということを念頭におけば、L(y) は線形演算の和のみから成り立つ演算子なので、これは自明といってもいいかもしれませんが、念のため書いておくと、
$$\begin{align} &L\left( k_1y_1+k_2y_2 \right) \\ &= \frac{d^2}{dx^2}\left( k_1y_1+k_2y_2 \right) + a_1(x)\frac{d}{dx}\left( k_1y_1+k_2y_2 \right) + a_0(x) \left( k_1y_1+k_2y_2 \right) \\ &= \left( k_1 \frac{d^2y_1}{dx^2}+k_1a_1(x)\frac{dy_1}{dx}+k_1a_0(x)y_1 \right) + \left( k_2 \frac{d^2y_2}{dx^2}+k_2a_1(x)\frac{dy_2}{dx}+k_2a_0(x)y_2 \right) \\ &= k_1 \left( \frac{d^2y_1}{dx^2}+a_1(x)\frac{dy_1}{dx}+a_0(x)y_1 \right) + k_2\left( \frac{d^2y_2}{dx^2}+a_1(x)\frac{dy_2}{dx}+a_0(x)y_2 \right) \\ &= k_1L\left(y_1\right) + k_2L\left(y_2\right) \end{align}$$
なので、$L(y)$ もまた微分と同じように線形性を持ちます。
 これで、準備が出来ました。いま、
$$L(y)=\frac{d^2y}{dx^2}+a_{1}(x)\frac{dy}{dx}+a_0(x)y$$
であるとき、方程式
$$L(y)=f(x)$$
における解の重ね合わせの原理
$$y=y_{\mathrm h}+y_{\mathrm p}$$
をみてみたいのですが、同次解 $y_{\mathrm h}$ と、特解 $y_{\mathrm p}$ については、当然、その定義より
$$\begin{align} L(y_{\mathrm h})=\frac{d^2y_{\mathrm h}}{dx^2}+a_{1}(x)\frac{dy_{\mathrm h}}{dx}+a_0(x)y_{\mathrm h} = 0 \\ L(y_{\mathrm p})=\frac{d^2y_{\mathrm p}}{dx^2}+a_{1}(x)\frac{dy_{\mathrm p}}{dx}+a_0(x)y_{\mathrm p} = f(x)\end{align} $$
が成り立ちます。ここで
$$L(y)=\frac{d^2y}{dx^2}+a_{1}(x)\frac{dy}{dx}+a_0(x)y$$
なので、
$$L(y)=L\left( y_{\mathrm h} + y_{\mathrm p} \right) = L\left( y_{\mathrm h} \right) + L\left( y_{\mathrm p} \right) = 0 + f(x) = f(x)$$
となり、同次解と特解の重ね合わせはまた非同次形方程式の解であることが分かります。

同次方程式における解の独立性とロンスキー行列式

 $n$次同次方程式の解は、$n$次元のベクトル空間 (線形空間とも) を作ります。ベクトル空間を作るための条件は、和の公理 $f(a+b) = f(a)+f(b)$ とスカラー倍の公理 $f(ka) = kf(a)$ が成り立つことでした (他にも多数条件があるが、代数演算で元を操作する限りはこの二つだけ確かめられればあとは自明といえるから)。これは、考える微分方程式の解の集合 $y$ のうち、任意の解 $y_1, y_2$ を考えると、微分が線形演算であることから、スカラー倍の公理と和の公理が自明であるため、言えることです。このように、$n$次同時方程式の解空間がベクトル空間であることを示すのは容易ですが、それが$n$次元であることを示すのはやや難しいのでここでは鵜呑みにして省略します。
 さて、解空間が$n$次元空間ということは、基底は $n$ 個存在することになります。関数なのにベクトルというのはなんだか変な気分ですが、ベクトル空間の条件を満たす以上、関数もベクトルの一種です。このことから、$n$ 解線形方程式の解空間には $n$ 個の基底、すなわち $n$ 個の一次独立な関数が同次解を形成するということができます。
 では、そもそも関数の一次独立とは一体何なのでしょうか。結局ベクトル空間なので関数をベクトルのようなものとして類推するだけです。つまり、ベクトルの一次独立であるかどうかの定義に当てはめるだけですが、もし、どうしてもイメージがわかない場合は、強いて言うなら、ある区間において、比べる関数のうち、ある一つの関数を他の関数の和として表現することで全く同じグラフに出来るか?ということです。ここに $n$ 個の元、すなわち $n$ 個の同次方程式の解がある場合、それらが一次独立であるか、一次従属であるかを判断するための式 (線形関係式) は、
$$c_1y_1 + c_2y_2 + \cdots + c_{n-1}y_{n-1} + c_ny_n = 0$$
で与えられます。すべての $c_k$ が $0$ である、つまり自明な解であるとき、これらは一次独立であるといい、ひとつでも $0$ でない $c_{k}$ が存在する場合は、非自明な解を持つといい、一次従属であると呼びます。ここまではベクトルの場合と全く一緒です。しかし、残念ですがこの式を解くためには判断材料が不足しています。$n$ 個の未知数があるのに、式が一つしかありません。ベクトルの場合は、$n$ 次元だから、$n$ 個の成分が存在するため、$n$ 本の式が立てられることにより、それで判断可能でした。そこで思いつくのが、$y$ は $n$ 階同時方程式の解なのだから、$n$ 階微分可能なので、とりあえず $n-1$ 階まで微分して $n$ 本の式を作ってみようということです。$n$ 階微分までやらなくても $n-1$ 階微分までですでに $n$ 本分になることに注意しましょう。
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線形代数学の定理より、この n 本の方程式から一次独立、一次従属を判断するためには、行列式
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が、0 であるかどうかを判断すればよいのでした。これが 0 ならば関数は一次従属、0 でないならば一次独立でしたね。この行列式 W をロンスキー行列式 (Wronskian) といいます。W なのは、ロンスキーさんのつづりが Ronski ではなくて Wronski だからです。
 n 階方程式でごちゃごちゃした一般論を書いても長いので、実用的に特に重要な二次の場合、ロンスキー行列式は
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で表されます。

定数係数同次線形微分方程式の解法

 以上から、定数係数の同次方程式を解くためには、あとは n 個の一次独立な解を発見できればよいことがわかります。定数係数の場合と限定したのには意味があって、実は同時方程式が定数係数であると、非常に簡単に解けます。その方法はこうです。まず解を
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と仮定します。私も最初は何それと思ってしまいましたが、これがすごくうまい方法なのです。感心します。次に、これを直接代入します。x で微分した回数だけ、係数 λ が前に出てくるだけなので、結局、同次方程式の場合
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であることがわかります。ここからが素晴らしいのですが、全部 e の λx 乗を係数として持っています。これは明らかに 0 ではないので、 e の λx 乗で両辺を割ります。すると、
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という、ただの n 次方程式を解けば、その n 個の解が、同時方程式の解であることがわかります。この方程式のことを特性方程式 (Characteristic Equation) といいます。ここで、この方程式が重解を持たない場合、明らかに全ての解はロンスキー行列式を計算するまでもなく一次独立であるため、それが同次方程式の解であるということができます。わざわざ非同次方程式でも、同次形の場合を解いてから・・・という面倒な手順を取るのは、この理論があるためなんですね。このあと、非同次形の解を 1 個でも探せれば、この同次形の一般解、同次解との和で一般解が得られるわけです。ただし、重解や虚数解を持つ場合は、もう少し考察を加える必要が出てきます。
 ここからは、簡単に考えられるように n=2 , 二次の場合で考えてみます。次数が上がっても理屈は同じですからね。二次の場合、特性方程式は、
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という二次方程式になります。これが、異なる二つの実数解をもつとき、同次方程式の解は
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で与えられます。ベクトルの世界でいえば、このことは、二次元空間の任意のベクトル (一般解) は、二つの基底の線形結合で表すことができる、ということをいっているのに相当します。念のためロンスキー行列式を計算してみると
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で、重解ではありませんからこの二つの λ は等しくないため、一次独立であることが分かります。
 しかし、重解と虚数解を持つ場合は注意が必要です。まず、重解を持つ場合は、当然 λ は 1 個しか定まりません。ということは、2 個の基底になっていないので、解が一つ足りなくなります。これは、重解を λ とするとき、二つの解を
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とおく、要するに二つ目の e の λx 乗には x をつっつけることで解決します。これは理論云々よりテクニックなので、覚えた方が無難です。この解法は定数係数二階線形微分方程式の雄、運動方程式を有する力学はじめ、方々で見ることとなるでしょうからね。とりあえず、重解の場合 x をくっつけたものも元の方程式を満たすことだけ確認しておきます。
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ですが、かっこでかこった部分は、そもそも λ がこの特性方程式の解そのものであるため当然 0 になります。結局残った項について、
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が成立しなければならないことになりますが、特性方程式の解の公式より、重解を持つ場合はまさに
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であるため、成立します。したがって、重解を持つ場合の解は
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で表現されることが示されます。実は n 次においても、n 重解である場合はこのまま x の二乗、三乗・・・と重解の数だけ x の累乗をくっつけていけばいいのですが、その証明はここでは省略します。でもテクニックとして知っておくと便利です。
 虚数解の場合はさらにやっかいなことになります。これは運動方程式はもちろんのこと、電気回路の過渡現象などかなりの頻度で目にするためひととおり過程を知ったら結果だけ暗記しておいた方が無難です。定数係数線形微分方程式の解法は非常にいろいろなところで見る応用数学の代表格なので、とくにこの辺の解法は暗記しておくことが望ましいです。虚数解をもつ場合、特性方程式の解は
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で、ルートの中は負なので虚数が出てきますが、これを実数部と虚数部に分けて、
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とします。共役な複素数というやつですね。虚数解の存在を認めれば、一次独立な解は問題なく求まって (下の画像は編集の不手際で 2 番目の項に x がついていますが、これは取り除いておいてくだしあ。)
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です。このとき、解は実数の世界に限定されなくなったため、c も複素数となります。これで解は書けましたが、このままではたいへん不都合なことがおきます。この解は複素数なのでグラフに書くことができません。グラフに書くことができなければ、挙動が分かりません。なので、虚数は実数の拡張という見方もできますから、うまく変形し、最終的に虚数部に制限をかけることで実数しか出ないようにすれば、実数の範囲でのということにはなりますが、我々になじみのある、実数の世界での同次解というものが求まるはずです。ただし、その虚数に何でも勝手に制限をかけてしまうと実数世界に、"失われた情報" が出てしまうので、虚数の世界だけが出てこないようなうまいやり方を考えなければなりません。この方針に従って、変形していきます。
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ですが、e の虚数乗は実数項と虚数項に分離できます。オイラーの公式
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を使うのです。左の項は θ = bx、右の項は θ = -bx として適用すればよいですね。
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となりました。これで綺麗に分離ができるため、任意の複素数の中でも、とくに
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となるような組み合わせに c を限定します。これは c が共役な複素数であるということをいっていますね。これで、二つの複素数係数を持つ項があるけども、両方実数となるのはこのパターンのみなので、情報を失うことなく実数の範囲で解を求められたことになり (ちゃんと一次独立である二つの項がある)、このときの同次解は (なぜか上の画像も下の画像も yh とするところが yp と誤って表示してしまいました。これらは同次解なので h に脳内変換してください。)
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であることがわかりました。(k だと不揃いなので c になおしました。この c はもちろん虚数ではなく実数です)
 以上が、二次の全てのパターンになります。三次以降も基本は一緒で、これらのパターンの組み合わせとなります (虚数解で重解など)。
 これで、定数係数の同次方程式が解けるようになりましたが、非同次の場合、まだ特解を求める作業が残っています。特解は、一つだけ求めればいいにもかかわらず、何も考えずすぐ出せるというようなものはほとんどありません。そこで、いくらかうまくやる方法が確立されていますので、それらについてまとめてみます。

特解の決定[1] - 未定係数法

 非同次項が、その形が微分してもさほど形に影響を及ぼさない、具体的には e の指数関数、三角関数、級数関数 (x の整数累乗項のみでなる関数) である場合、解の形を仮定することで係数比較によって特解を求めるという非常に簡単な問題に帰着させることができます。このような手法のことを未定係数法 (Undetermined Coefficients) といいます。未定係数法はパターンが決まり切っていて、そんなに覚えづらいことではないので公式とかそういうのより実際に解いて体で覚えるのが一番だと思います。
 この方法は実際テストや演習などで与えられた方程式を解く上では重要で、未定係数法という名前までは教わらないかもしれませんが、微分方程式の詳しい解法をまだ学ばないくらいの早い段階から物理の問題演習で登場します (もちろんそのときの私は何をやっているのかさっぱり分かりませんでした)。力学においては外力が sin, cos などで働くパターン、電気回路においては、過渡現象で交流電流あるいは交流電圧を含む回路の定常解を考えるパターンで出てきます。どれも、根底にあるのは未定係数法の考え方なので、この源流さえ押さえておけばどこで出てきても「これは未定係数法だな」と身構えられるのでまず困りません。
 まず、f(x) が級数関数 (x の整数の累乗でなる多項式) である場合、その最高次数を m とすると、
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と仮定することで、あとは各階数微分し、微分方程式に代入、その後恒等式の係数比較をして係数を決定して特解が求まります。これは、線形の微分方程式なので、y の項も含みます。ということは、これは上で仮定したものが生で出てきますから、当然仮定する特解の最高次数は、非同次項の最高次数と一致させておかなければ、微分したら右肩の数字が落ちる一方ですから、おかしなことになってしまうのでこのようにおかなければなりませんね。で、いろんな階数微分してその結果を足してるわけですから、それによって偶然 m 次より低い項同士が打ち消し合って消えたりしたかもしれないので、それ以下の次数もずらーっと並べてあるわけです。そう考えればそんなに納得のいかない置き方でもないと思います。今回は紹介する内容が非常に多いので、手法だけここで先に述べて練習問題は別の記事で書きたいと思います。注意してほしいのは、非同次項が定数である場合もこのパターンに含まれるということです。
 次に、e の指数関数、ここでは非同次項が e の ax 乗であった場合
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と特解を仮定し、b を決定します。同次のときは、右辺が 0 でしたが、そこに e の ax 乗がついたなら、その右辺も含めてうまく右辺も左辺も全部の項 e の ax 乗もつようにして面倒な指数関数は式から消滅させよう、というわけですね。これもそんなに納得のいかない置き方ではないですね。
 非同次項が sin, cos あるいはその足し合わせであった場合は、cos, sin の中身が ax であるとき、
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と仮定します。これも微分したら sin, cos が反転して・・もし非同次項が片方だけならもう片方がそれによって打ち消し合ったかもしれませんので、いずれの場合でも両方並べておくのです。
 もし、以上みっつのパターンの和になっていた場合は、それぞれのパターンについて足し合わせればいいだけです。なぜならば、特解もまた重ね合わせが効くからです。非同次方程式が
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と、二つ以上の関数の和で表現される場合、関数が片方しかなかったときの非同次方程式の特解を
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とおけば、同次解と特解、みっつを足し合わせた解を方程式に代入すると
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となるので、たしかに重ね合わせは有効です。
 とはいっても、具体的な例がないと辛いので、たとえば、
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だった場合、e の累乗と sin, cos のパターンの足し合わせですから、特解はそれぞれ単独の場合に仮定する特解の足し合わせ
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で係数 a, b を決定することになります。
 また、積の形でこれらのパターンが組み合わさっている場合は、その式で考え得る最も一般的な形で解を仮定します。どういうことかというと、これも例でみた方が分かりやすいので、たとえば、
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だった場合、積のまま
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となります。ようするに x の多項式と他のパターンがくっついていたら積のまま x の多項式の次数はちゃんと 0 次まで並べて書いてねということですね。e と cos, sin の場合も積のまま sin, cos は並べようとか、cos, sin と x の他項式の場合も・・・とか、そういうことです。上の場合 e に係数がないですが、どうせ多項式に作用したら係数がついたことになるので、それでついていないだけです。未知数同士の積なんて出てきたら面倒ですからね。
 最後に、未定係数法には注意すべき点があります。実は、未定係数方は、特解として仮定した解のなかに、係数は無視して、同次解とひとつでも共通する次数の項が存在する場合、同次解とひとつも共通の項を持たないよう x の何乗かをかけなければならないという決まりがあります。仮に特解と共通する項が出てきてしまった場合、特解が全て具体的な値 (特解の集合の中の一つを取り出したわけですからね) で出てくる一方、同次解は任意定数を含む無数の解なので、その場合同次解に特解の一部が吸収されてしまいます。これでは仮定がうまくいかず、解けなくなってしまうので、ひとつも吸収されないように共通項がなくなるまで x をかけます。さすがにこれはどういうことか例を見ないと分かりづらいので、具体的には、たとえば、(下の画像は e のマイナス x 乗が非同次項になっていますが、e の x 乗の間違いです)
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という方程式があったとき、このパターンに相当します。でも、実際に特解を仮定する前に、同次解から求めてみないと共通項があるかどうか分かりませんから、まず同次解つまり
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の解を求めます。特性方程式は結局微分階数を λ に置き換えればいいだけなので
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となります。これは λ=1 で重解ですから、同次解は
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と求まりました。次に特解ですが、e の x 乗なので、特解を
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と仮定しますが、すでにこの時点で同次解と同じ e の x 乗を持ってしまっているため、特解はこのようにおいてはいけません。こうしてしまうと上に代入すれば分かるとおり 0=1 となってしまい、おかしなことになります。したがって、重複しないよう x をかけて解を仮定しなければなりませんが、x をかけただけでは同次解の二番目の項と同じなので、結局 2 乗をかけなければなりません。したがって、この場合は
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とおかないとうまくいきません。
 ここまでの手法を習得したら、未定係数法はもう完璧だと思います。しかし、残念なことに、世の中こんな簡単な場合ばかりではないのです。微分すれば形を変えずに右上の数字が減るだけ、指数の係数が前に出るだけ、sin と cos を循環するだけ・・・というようなのは、上の例だけなのです。たとえば、非同次項が sin の二乗や、log、tan だったりした場合は、未定係数法では解くことができません。これには、次の方法がとられます。

特解の決定[2] - 定数変化法

 同次解における任意定数を、x の関数であったと仮定してその関数の形を求めると、非同次項がどのような形であっても理論上解くことが可能です。この方法は定数変化法 (Variation of Parameters) といいます。どんな形でもいいなら未定係数法なんていらないじゃないかと思うかもしれませんが、一般に定数変化法は二次以降に適用するとたいへんな手間がかかるうえに、積分演算をしないといけないので、その手間は未定係数法を遙かに上回ります。したがって、未定係数法が適用できる場合は、1000% 未定係数法で解いた方が効率的です。
 これも、なぜ成り立つかとかよりもどうやって解くかの方がずっと重要であるため、その手法を追っていくことにします。証明ではありませんがなぜ成立するかは順に見ていけば分かります。とりあえず n 次で考えても難しいので、2 次で考えることにしましょう。すると同次解は (下は編集の不手際で h とするところが p になってしまいました、脳内修正してください)、
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ですが、ここで方法通り、c を x の関数であるとして
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と特解を仮定します。こう仮定した以上、ふたつの C の関数について求めなければいけないので、必要な式は少なくとも 2 つはあるはずです。ひとつはもちろん、微分してそのまま元の方程式
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が成り立たないとおかしいので、当然として、もう一個はどうすればいいのでしょうか。もし、自分で勝手に条件を作ったとして、それで必ずうまく解けるのであれば、それでいいのですが、その条件を作るにしてもどうすればいいのかこのままでは見えてきません。ここで、とりあえずひとつめの条件を実践し、元の方程式に代入してみましょう。
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y1、y2 は同次解なので、そのまま c でくくれば同次形の方程式があらわれますから、c でくくってあるものは当然 0 になります。結局、上のようなものが残りました。この式が f(x) と等しくならなければならないのですが、ここでもうひとつの条件を、わざと具体的に微分しないで ' としてあるとおり、
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であれば、右の二つの項がともに消滅して非常に都合がいいのがわかります。なにより、こうすれば二階微分を出さなくていいのが利点ですね。したがって、それで最初の条件とあわせると、c の関係式は
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と、0 階微分の項は消滅してしまったので 1 階微分についての連立方程式ができあがりました。これならうまく解くことができますね。線形代数で出てきたクラメールの公式により、また、クラメールの公式における Δ (係数行列) がちょうどロンスキー行列式になっていることにも注意すれば (下の画像の右の行列式にある y2, y2' は y1, y1' の間違いです。)
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であることがわかります。W(y1, y2) という表記は、ヤコビ行列式のようにその二つの関数に関する行列式だよというお知らせをしているだけです。あとは、これらを積分して・・そのまえに行列式を計算しておいて、
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という一般的な式が得られました。最終的に、特解は、
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で与えられることが分かります。これが特解の解の公式です。しかし、これをそのまま解の公式として使え的なことを書いている参考書もあるようですが、こんなものを覚えても絶対に長すぎて覚えられないので。覚えません。上記の手法を必要に応じて用いればいいだけです。原点は、同次解の定数を関数としてみたらどうなるかということ、それと、c の二階微分以上は登場させたくないので、一階微分の項のまとまりが出てきた時点で早々に 0 と仮定してしまうこと。これだけです。3 次以降は長すぎるので一般形で確認はしませんが、上記のような計算は 3 次以降にも全く同じ理屈で適用出来ます。
 だから、具体的には、まず同次解を求める。次に、その任意定数が x の関数であると仮定する。そして、必要階数微分するが、微分した段階で c の微分項が出てきたらそのまとまり自体を 0 であると仮定する (この二次の解法からわかるように、二階微分を出すと解くのが不可能に近い)、そして最高階数まで微分したらあとは全部元の式に放り込んで n 本の式を作って、クラメールの公式を使って解く (これを使うまでもないほど簡単な連立方程式の場合は、もちろん中学校の方法で) と、そういう手順です。何次になろうが、クラメールの公式における係数行列がここではロンスキー行列式になっていることも注意ですね。あとは、そうして得られた特解を同次解に付け足して終了となります。
 これで一通りの線形微分方程式の解法は紹介したと思いますが、ここまで量が多いと練習しなければ身につかないと思うので、例題は次の記事にまとめて書いておくことにします。

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