電磁気学 [2] - 演習問題 part1

blog.li.nu >
この記事が役に立ったら
投げ銭も受付中です(更新は滞っていますが2017年現在も元気です)。
Monacoin: M9VkYEVo59mQUsWt9tRDfNi6b9SBNqMSyz
BitZeny: ZgD57J2vDBTBcSXgg814Fr8MrgNqpyC3n6
今回は典型的な演習問題をいくつか取り上げておきます。電磁気学という名前の本を買うと必ず演習に載っている、あるいはその名を冠した授業を受ければ必ず課題や試験に出る、というほどの重要なものだけ集めました。問題文自体は方々から集めてきましたが、解答は用意されたものではなく、全て独自の解釈で書いたので、誤りがある場合はコメントで指摘してください。

1 .クーロンの法則

 
問. 1 辺の長さが a [m] である正方形 ABCD の各頂点にそれぞれ等しく q [C] の点電荷を配置します。このとき中央に何 [C] の電荷を置けば各電荷が釣り合うか求めなさい。
この手の問題はクーロンの法則を試すにはもってこいであるためよく見ます。今回は正方形ですが、ほぼ同様な解き方で正八面体の問題などもあります。まず、問題を図にすると以下のようになります。
001.png
まず中心に電荷を置く前に、各電荷にどのような力が働いているか調べます。ある点電荷が受ける力は、他の点電荷による静電気力 (クーロン力) のベクトルの重ね合わせになるので、たとえば点 A の電荷が受ける力は、点 B, C, D にある点電荷によるクーロン力を足し合わせればよいことになります。
002.png
実際に絵に起こしてみれば、このように、対称性が非常によいため、B. C による力は大きさが同じで直角をなしているので、結局ベクトルを合成するとその合力は C による力と同じ方向を向くことが分かります。したがって、最終的に点 A の点電荷が受ける力の向きは、対角線 CA の方向であることがわかります。正方形なので、回転すればどの点でも同じことが起こっているのがすぐに分かります。ですので、この点 A に働く対角線 CA 方向の力とちょうど釣り合うようなクーロン力が起こるように点 O に点電荷を配置すれば、残りもそれでよいのです。幸い合力が対角線上にあるので、 O も対角線上の点ですから、結局、単純に点 A に働く力と逆向きの力が働くような電荷を置けばよいことがわかります。以上を踏まえて、実際に解答を作成します。
 まず中央 O に点電荷 Q を置いて力が釣り合ったとすると、その対称性より、点 A に働く力は、対角線 CA 上にあることがわかります。したがって、点 A の電荷が受ける、O に置いた点電荷 Q によるクーロン力も同じ対角線上にあるため、対角線 AC を軸にし (AC の向きが正とします)、力の大きさをスカラーで比べてやればよいことになります。A の点電荷が他の 3 つから受ける力は、"C による力 + B による力を 45 度寝かせた物 (つまり B による力の対角線成分) + D による力の対角線成分" になるので、これと点 O との力が釣り合うには、今の言葉をそのまま式に起こしたもの、
003.png
を Q について解けばよいことになります。正方形なので 1 : 1 : ルート 2 の関係によって対角線の長さが決められることにも注意しましょう。 A と O との距離は、その対角線の半分でしかないので、ルート 2 の半分、つまり 1 / ルート2 です。あとはそのまま計算すれば
004.png
と求まります。電磁気学に出てくる諸定理、法則は、一般の形、つまりどんな場合でも適用できるようベクトルを使って書かれています。ですが本当に一般の場合を手計算で解くことは不可能です。結局問題としてやらされるのは、このように対称性がよいため簡単にベクトルの合力が求まるものに限定されます。

2 : 電荷分布による電界

問. 線密度が λ、面密度が σ で、それぞれ定数として扱えるとき、以下に答えなさい。
 
 (1) z 軸上の点 l1 から l2 まで分布する線密度による任意の点 P の電位をクーロンの法則を用いて求めなさい。ただし、電位を求める点 P から z 軸に下ろした垂線の長さを a とする。
 (2) 薄い円盤上に電荷が分布しているときの、円盤の中心軸上の任意の点 P に円盤が作る電界をクーロンの法則を用いて求めなさい。ただし円盤の半径を a とする。
 (3) (1) (2) において、それぞれ、線の長さを無限大、円盤の大きさを無限大にすると電界はどうなるか求めなさい。さらに、その結果は、この状態についてガウスの法則によって求めた場合の電界と一致するか確認しなさい。
(1) は典型的な問題のひとつで、必ず演習問題に出てきます。図に起こすと以下のようになります (図ではまるで線上全てに λ が分布しているかのように見えますが、問題文の通り l の 1 から 2 の間にしか λ は分布していませんので注意)。
005.png
[1] の記事で示した通り、点電荷でなく電荷分布になったとしても、ごく小さな区間に区切って行けば、その区間その区間では点電荷みたいなものです。なので、その点電荷 (みたいなもの) による電界や電位を重ね合わせていけば、求めたいものを求めることが可能になります。さっそくそのアイデアに基づいて、式を立てますが、電界を求める問題の基本として、電界の方向が計算するまでもなく分かるような場合でなければ (つまり、先ほどのような場合でなければ)、電界を直接求めることはせず、電位から電界を求めるのが普通であることは知っておく必要があります (まあ、この問題は電位だけでよいので必要ありませんが、次の問題はこの手法です)。なぜならば、電界の重ね合わせはベクトルになりますので、先ほどの問題のようにとても分かりやすい向き、大きさのバランスでなければ、どの向き、大きさになるかなどが全く分からなくなるからです。同じ重ね合わせが有効なものでも、電位はスカラーですから、単純に向きなどは考慮せず電位をどんどん足していけばいいだけで、楽です。しかも、よくご存じのように、電界は、
006.png
という関係にあるため、ひとたび電位がわかれば、その座標系で電位を微分すれば電界が容易に求まります。
 さて、実際に電位を求めようとすると、以下のようになります。線密度が分布している直線を z 軸とし、その直線上には単位長さあたり λ の電荷が一様に分布します。z 軸上の任意の点 z における、λ が作る電位についてですが、この直線上の微小な区間 dz には、単位長さあたり λ なので長さ dz をかけて λdz の点電荷 (のようなもの) が存在しています。ちょうど上の図と同じ場合です。点電荷 Q が、そこから距離 r だけ離れている点に作る電位 φ は、
007.png
で与えられるので、今回の場合、微小区間 dz にある点電荷 (のようなもの) λdz が作る電位 dφ は
008.png
となります。距離 r は、図の通り高さ z (現在の座標)、底辺 a の直角三角形の斜辺にあたるので、上のように書けます。したがって、あとはこの dφ を z 軸に沿って l1 から l2 まで重ね合わせる (つまり微少量の総和の幅をゼロ極限化 → 積分) ことにより、P 点の電位 φ を求めることができます。これを式にすると、
009.png
となります。この形のルートの積分は定番というより、積分公式の一種になっていますね。この関数の原始関数は、
010.png
になることが知られています。これは公式なので、もちろん何の疑いも無くこれを適用して計算を終えてもよいですが、どうしてこんなことになるのか、よほど微分積分学を熱心に勉強してきたのでなければ、疑問に思うはずです。sin や cos レベルの積分ならともかく、この公式をすぐ出せる人はほとんどいないと思います (出番が圧倒的に少ないですからね)。この手のルートの積分にはいくつか決まった置換積分のパターンがあって、このようなルートのなかに二乗を含んだパターンは、以下のように置換積分することでうまく積分できるようになります。もし公式を覚えるなら、式自体ではなく、以下の技巧的な印象でもって覚えれば自分で導出できるようになってより楽になるでしょう。
011.png
なぜこのように置くのが賢いかというと、これはもう計算すれば分かるとしか言いようがないのですが、まず置換のために z = のかたちで z を消去できるようにすること、次にそれを t で微分して dz を dt の式にすることが必要です。そのためにはルートを消す必要があるので、移行して二乗し、整理します。以上を実行すると
012.png
という結果を得ます。これで準備が整ったので、元の式を t のみの式に置換しましょう。ルートは置換の定義から t-z でそのまま置き換え、そこにいま z を t で表した物を代入・・・としていけば楽ですね。
013.png
結局、こんなに簡単な形に持って行けることが分かりました。したがってこの原始関数 log|t| の t は、
011.png
で置換したので、戻して
010.png
を得ます。今回はどちらの l も正にしてあるので絶対値は要りません。ちなみにルートの中の + が - のときは逆三角関数が原始関数でしたが、なんでプラスになってくらいでこんなに覚えづらくなるんだと思ったかもしれません、しかし実は上の式は逆双曲線関数ですっきり表示できます。双曲線関数の定義から逆関数を自分で解いてみると上の log の式と全く同じになる (a が 1 の場合。1 でなければ当然置換が必要) ので確認してみるとよいですね。さて続きを計算すると
014.png
という答えになります。なお、この問題の場合、電界を求めよとはなっていないのは、このまま単純に微分するにも P を動かすにあたって変位するパラメータは a, l1, l2 と、そのままでは簡単に微分することができないからです。これに対して次の問題は点 P の可動範囲が一次元的で限られているので簡単に gradφ を取ることができます。
 
(2) この問題は電荷分布の作る電位・電界の典型的な問題であるだけでなく、よい面積分の練習にもなります。この手の問題はとにかく "何を重ね合わせるか" のイメージが重要です。面上に単位面積あたり σ で分布しているので、やはり小さな面積 dS をとり、その点で作る点電荷 σdS による電位を重ね合わせて電位とします。この問題の場合、電界を求める点 P の変位が一次元的であるため、電位を求めてから軸方向に微分した方が楽なのではないかなと思います。それで、dS をどうやって集めていくかですが、円盤なので、微小面積をぐるっと一週回してドーナツを作ります。で、そのドーナツの半径を徐々に変えていってあげれば、円盤ができるでしょうというやり方になります。つまり極座標上での二重積分になるわけですね。平面上で、φ は 0 度から 2π までグルっと周り、それで円盤ができます。あとはその円盤の半径を 0 から a まで広げて重ね合わせていけば、完成というわけです。図に起こすと以下のような状況になっています (電位の φ と角度の φ がかぶってしまいましたが、当然、別物としてください)。
015.png
この dS の解釈のしかたが慣れてないと若干困惑するかもしれません。普通の積分が、微小幅でやがて 0 に持って行く (点になる) から曲がりなんてどうでもいいよという解釈だったように、これも微小面積は曲がりを無視して長方形でいいでしょうというやり方になります。図のような目で見える大きさなら明らかに面積が違いますが、点に収束させると誤差がなくなるということですね。dS は面積でないといけないので、単に半径 r が伸びた先に円周を作っただけでは不十分です。その円周上で rdφ を作っても、それは長さでしかありません。したがって、面積の次元にするためにわずかな厚みを加えます。これは半径方向に一様に、わずかに伸ばすため r 方向の微小変位 dr で表現されます。これが、図で拡大した dS の高さに相当します。底辺は、現在の座標 (r, φ) から、わずかに反時計回りに動かした点 (r, φ+dφ) までの円周の長さになるので、円周は角度 (弧度法の) かける 半径で与えられますから、rdφ でいいということになります。以上から、図でも書いたとおり dS = r dφdr であることがわかりました。あとは、面上で点電荷 σdS による点 P への電位を面積分して重ね合わせればいいことがわかります。点電荷 σdS が中心軸上の点 P に与える電位 dφ は、
016.png
で表現できますね。円盤上の点から、点 P までの距離は、図に書いたとおりですからね。 r = ルート{ (z の 2 乗) + (r の 2 乗) } となります。もうこれで計算の準備は整いました。 dφ を円盤 S 上で面積分すればいいだけですよね。でその dS は極座標でキレイに表現できたので二重積分に直して終わりになります。
017.png
ここまではよいですね。さて二重積分で φ も使ってみたものの、被積分関数に φ はないので内側の積分は定数 2π を出して終わりになります。あとは変数 r が分子に、 2 乗が分母にあるのでお約束の置換積分ですね。
018.png
まあこの程度の重積分は、電磁気学なんて難しいものに挑戦するのであれば、その難解さに比べたらたいした計算ではないと思います。実際自分も上の計算はペン持ってないですしね。この手の問題は式が立てば問題は 90% 終了します。式が立ったら計算なんてすぐです。
 次に、ここから電界を求めるには、
006.png
と、電界の変位方向で微分する必要があります。今回動かせる点 P は軸上、つまり z というひとつのパラメータしかないので、残りの a などは問題にならず、単にいまの電位 φ を z で偏微分すればいいだけになります。
019.png
これが答えですが、もうちょっと式を整理することもできます。よくみたら第二項は、点 P から円盤の円周に引いた線 (いわゆる円盤 - 点P からなる円錐の母線) と軸とのなす角度を θ とすると、
020.png
で表現できます。ここで公式になってしまいますが、この開きが θ のときの円錐の立体角は
021.png
になるので、つまり点 P から円盤を見たときの立体角を ω とすれば、電界は
022.png
と書けます。これも答えです。立体角でこのように書けたということはつまり、視界を覆う、立体的な開き (立体角) に比例して電界が強くなることを意味します。そういう意味じゃ (3) は即答できると思いますが、もしこの円盤が無限だと視界を上から下まで覆うでしょう。ということは立体角はちょうど球面に投影すると半分ということになります。なので立体角 ω = 2π とすればただちに (3) の答え σ/2ε を得ます。まあ普通に a → 無限大にしても同じで、即答ですけどね。
023.png
絵にするとこういうことになります。板が大きくなるとどんどん立体角が大きくなっていきますが、いくら縦方向に広がっても、点 P の裏に回り込むことはできないので、そっち側を包むことはどうやっても不可能です。東京タワーの頂上から自分に向かって線を引くとき、仮に自分がどんなに小さくて、東京タワーがどんなに大きかろうと、確実に自分の前からしか線はやってきませんよね。

その他の記事

コメント

名前 :
電子メール :
URL :
コメント