微分方程式[6] - 偏微分方程式の解法

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参考文献: フーリエ解析 (マグロウヒル大学演習), Partial Differential Equations for Scientists and Engineers (Dover Books on Mathematics)
今回は偏微分方程式についてです。このブログの中に偏微分方程式というシリーズは存在しますが、ここでは常微分方程式のうち面倒なタイプの方程式が必要な理由を説明するための道具に過ぎないため、可能な限り簡単にまとめ、ここで改めて書いていくことにします。
 ベッセル方程式やルジャンドル方程式といった常微分方程式を考える際、それ単体で考えてもいまいち重要性が分かりません。そもそもどこでどうやって出てくるのか、要するに何に使うかが分からないからです。そこでまず、そういった方程式はなぜ必要なのかを考えます。それを考える際最もお手軽なのが偏微分方程式を解く途中で出てくるという紹介の仕方です。しかしながら、偏微分方程式の解法の流れを知らなければ、その導出もできません。この記事では、そもそも偏微分方程式とはどうやって解かれるものかというところから紹介します。
 ここでは一切偏微分方程式の知識を前提としませんので、分類から典型的なタイプの解法までを1つの記事でまとめて紹介します。したがってかなり量があります。

偏微分方程式とは

 これまで、変数が 1 つの関数の微分項を含む方程式を取り扱ってきましたが、これらは特に常微分方程式 (ordinary differential equation) といいます。例えば変数を x 、関数を y(x) とすれば、y' (dy/dx)、y'', … を含む方程式が常微分方程式です。
 一方で、変数が 2 つ以上の関数の微分項を含む方程式は偏微分方程式 (partial differential equation) といいます。とりあえず大量の変数の場合を例にとっても分からないので、一般論を述べる場合は常に 2 変数の場合とします。特に決まりがあるわけではありませんが、抽象的な場面(一般論など)において、常微分方程式の変数は x、解は y(x) とされることが多い一方で、偏微分方程式においては変数が x, y、関数は u(x,y) とされることが多いです。以下、特に「○変数関数」と明示しない限り、u というのは常に u(x,y) を意味するものとします。

線形と非線形

 名付け方は偏微分方程式とほとんど同じです。u(x,y) またはその微分の 1 乗のみを含む場合、線形 (linear) といい、そうでない場合は非線形 (nonlinear) と呼ばれます。つまり、
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こういった項のみを含む場合、線形ということです。一方で
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など、こちらは枚挙に暇がありませんが、u とその微分に定数倍以外の操作を加えたものを含む場合非線形になります。これから取り扱うものは常微分方程式同様全て線形です。線形でないものには統一的な解法が存在しないうえ、初歩的な現象は全て線形だからです。

常微分方程式との解の違い

 常微分方程式と偏微分方程式で決定的に違う点、初めての場合特に意識するべき点が 1 つあります。それは「任意関係」、常微分方程式で表れたそれは「任意定数」だったのですが、偏微分方程式では場合により「任意関数」になる点です。
 具体例を見てみます。常微分方程式で最も簡単な場合は、直に積分できるパターンです。
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これは高校の教科書でもおまけとして載っていることがある、という事実からも分かるように、そのまま積分してよいパターンです。左辺を積分すれば y になり、右辺を積分すれば x になりますが、定数は微分すると 0 です。つまり一回微分して定数になったということは、それによって消えた定数もあるはずです。しかし、この方程式からはその定数は何であるかまでは分かりません。言い換えると、定数があったことは確かですが、明示されていない以上それは何でもよいのです。これを任意定数と呼び、C で表しました。結局解として
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です。確かに両辺を微分すると定数である C は消えるので
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に戻ることが分かります。この C は 100 でも 0 でも 1/334 でも何でもよいということですね。
 次に、もう少し発展した形を再確認します。
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これも直に微分することが可能です。他に y やその微分がないからです。
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微分すると定数は消えるので、やはり任意定数 C が出現しますが、もう一回積分ができます。もう一回積分すると
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ですね。このとき新しい任意定数 D が出現しています。ここは C としてはいけません。なぜなら最初に出た任意定数と次の積分で出た任意定数には何の従属的関係もないからです。どちらも独立である以上、文字は変えましょう。このことからわかるように、一般に常微分方程式は微分階数と同じだけの任意定数が解に出現します。
 さて、偏微分方程式の場合も同様でしょうか。やはり常微分方程式同様、直に積分できるパターンは存在します。ただ、同じ一回方程式の簡単な場合でも、
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のようなものは積分するだけでは解けないので注意が必要です。例えば左の項を x で積分すると、左は u になりますが、右は ∫Uydx になり、おかしなことになってきます。反面、x と y の微分が混合しない場合で、常微分方程式同様複数の階数が混在しない場合、つまり
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のようなものは解けます。見た目通り y で微分されているため、 y で積分すればよいだけです。
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見てください。このように任意定数 C のかわりに出てきたのは任意関数 f(x) です。これが解です。u は 2 変数関数なので、y だけでなく x も変数として含んでいます。つまり y だけで積分したということは、逆にいうと y だけで微分、つまり y で偏微分した場合、y がない項は消滅するということを意味します。例えば x だとか ルートx も y で偏微分すれば y に全く関係ないので 0 になるというわけです。以上より、任意定数だけでなく x のみの関数も y で微分すると全て消滅することがわかります。これが f(x) とおかなければならない理由です。
 全く同様に 2 階微分の場合も見てみます。
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これもやはり x だけで積分してよいパターンです。
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x で微分しているので、任意関数としては f(y) が出てくること以外は、何も問題がないでしょう。まだ積分可能です。
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このように、x にとって y は全く独立で、変数と同じ扱いです。そのため f(y) を x だけで積分すれば f(y) x と、係数のような扱いになります。そしてまた違う任意関数 g(y) も登場します。やはり偏微分方程式でも、階数と同じだけの任意関係を含んだものが解になります。しかし、その任意関係は、複数の変数がありそれを偏微分している以上、微分している変数と違う変数を含む任意関係、つまり任意関数でなければならないという違いがあります。ただし、今後の解法上、これらは結果的に任意定数になる場合が圧倒的多数です。このように一般論としては任意関数になることを知っておくとよいでしょう。
 なお、このときに出てきた任意関係を含む解は一般解 (general solution) と呼ばれます。例えば先ほどの
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は一般解です。この任意関係を具体的に指定したものは特解 (particular solution) と呼ばれます。上の一般解に例えば f(y)=y+2 を入れた
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は特解です。

2階偏微分方程式の分類

ここからどんどん具体的な話に入っていきます。実用上非常に重要なのは常微分方程式同様 2 階線形偏微分方程式です。常微分方程式は 1 階の方程式もそれなりに出ましたが、偏微分方程式ではほぼ 2 階しか出てきません。そしてその 2 階線形偏微分方程式は、標準形が少し面倒な形になります。
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なぜなら、常微分方程式なら 2 階、1 階、 0 階微分だけで済んだのですが、偏微分方程式は 2 つ変数があるせいで、x, y の 2,1,0 階微分、それに x, y で 1 階ずつの微分も出てくるからです。ここで滑らかな関数、つまり微分積分の授業で扱った都合の良い関数のみを取り扱うため、xy 微分と yx 微分は常に同じものとします。やはり常微分方程式と同じく、G=0 であれば同次方程式、G が定数含め 0 でなければ非同次方程式に分類されます。
 この A-G は全て x, y の任意の関数です。これも常微分方程式とは少し違うところなのですが、この A から G までの設定により、解き方や解の振る舞いが異なってきます。ちょうど 2 次曲線の分類と同じになっているのですが、
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という、判別式のようなものを考え、これが 0 未満の場合楕円型 (elliptic)、0 の場合放物型(parabolic)、0 より大きい場合双曲型(hyperbolic) の方程式だと言われます。これは純粋に分類の問題なので、別に忘れてもよいのですが、分類上はそうういう風になっていることを知っておくことが重要です。そして物理で出てくる代表的な方程式は、これら 3 種類を見事に網羅しています。今回はその全てを取り扱います。解き方は全く一緒ですが、解の形がそれぞれ違います。解にどう違いが出てくるかに注目してみて下さい。

初期条件と境界条件

 このようにして分類がなされた偏微分方程式ですが、一般解は応用上ほとんど意味をなしません。具体的な状況設定に合う解を得てこそ、意味があるのです。その状況設定のことを初期条件(Initial Condition: I.C.)、境界条件(Boundary Condition: B.C.) と呼びます。これらをもとに、その状況設定にあう解を見つける問題を境界値問題といいます。上で得られた一般解をもとに、それらの条件を適用して解を得るというわけです。
 一般に、多くの偏微分方程式は時間を変数として含みます。つまり 1 次元であっても時間があれば 2 変数関数で、偏微分方程式になることを意味します。時間を変数として含む場合、t=0 (かそれ以外でも) における値のことを初期条件と呼んでいます。そして、空間領域を表す変数の具体的な情報を境界条件と呼んでいます。ここではこれらは区別しますが、一般に全て境界条件と呼ばれることがあります。

変数分離法

先ほど非常に簡単なタイプの偏微分方程式は実際に解きましたが、常微分方程式同様、1 階微分や 2 解微分が混在した場合はこの方法ではお手上げです。定数係数線形常微分方程式ならば、解を
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とおくことで方程式がただの代数方程式(1次方程式、2次方程式)に変換され、いとも簡単に一般解が分かりました。偏微分方程式でも、すごく複雑な形になりますが、似たような置き方で解くことは可能です。しかし任意関数は一般に境界条件に適用し辛いので、そのような方法が採られることはまれです。つまりこの手の手法は偏微分方程式の場合不向きです。
 物理の問題のように、境界条件が決まっている偏微分方程式(厳密にはその条件にも縛りがあるので、境界条件さえあれば100%そうなるというわけでもないですが)の場合は、統一的な解法があります。それが変数分離法と呼ばれる手法です。これはなぜそう置くとうまくいくのかを探るのは無駄なので、とにかく現状このように置いて矛盾は見つかっていないという、ある意味熱力第二法則的な理解をしておくとよいかもしれません。今までの流れだとこのまま線形偏微分方程式の訳の分からない理論が展開されると思ったかも知れませんが、実用的な部分において、理論的とはいえないかもしれないものの、偏微分方程式の解法というものはむしろ常微分方程式より明快なものです。とにかく、まずは次のように置いてみて下さい。 u(x,y) なら
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です。こう置くと、定数係数の線形偏微分方程式は、
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という形に持って行けます。こうなると、左は x のみ、右は y のみになるので、左右は全く独立であるにもかかわらず、同じ値でなければならないということを言っているということになります。それは、両辺が定数でなければ起こりえないことです。したがって
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とおくことができます。これにより
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という 2 本の常微分方程式に分離されるわけです。それぞれの方程式を解き、X(x) と Y(y) を確定すれば、元の方程式の解は
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というかたちで求まるわけです。色々な方程式の種類によって、どのタイプの常微分方程式に分離されるかが変わってきます。特に多次元の場合で、極座標など、違う座標で考えると定数係数ではない線形常微分方程式が出現することがあります。簡単に言うとベッセル方程式やルジャンドル方程式はそういった違う座標系で考えた場合に出てくる常微分方程式であるために重要です。

放物型: 1次元熱伝導方程式の導出

 実際に 3 つの偏微分方程式をみてみます。分からない場合は式だけ覚えてもいいです。まずは放物型偏微分方程式の代表選手である熱伝導方程式 (拡散方程式)です。1 次元熱伝導方程式の場合、厚みなどが存在しない針金のような棒を考え、時間とともにその棒の各点の温度を表す関数 u(x,t) を求める問題になります。別名からも分かるように、物質が拡散していく現象もこの方程式で記述されます。その場合はその点における密度として u(x,t) が使われます。
 方程式は 1 次元の場合、
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で表現されます。偏微分方程式の分類は、2 階の係数を問題にしているわけですが、ここでは B にあたる xt 微分が存在せず、しかも C にあたる t の 2 階微分がいないので、判別式のようなものは 0 になります。したがって放物型になることがわかります。
 この方程式の導出は比較的シンプルです。3 次元で考えてもさほど変わらないので、ここでは u=u(x,y,z,t) だとしてこれを導出します。これは熱の出入りを表す方程式なので、まず熱の流束というものを考える必要がありますが、一つの事実 (法則) から出発します。それがフーリエの法則と呼ばれるもので、ある微小な面から別の面への熱の出入り、つまり熱の流束は
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で表されるというものです。K は熱伝導度と呼ばれる係数で、要するに熱は高い方から低い方に向かってその勾配に比例して流れていくことを表しています。u を温度分布だとすれば、∇u は温度の高い方への勾配を取っていることになりますが、マイナスをつけることで熱が高い方から低い方に流れるという本来の ∇ とは逆方向であることを表現できるわけです。∇u が大きければ熱の変化がより大きいということになります。 -K∇u が熱の流れのベクトル場になっているということですね。
 次にある体積 V とその表面 S を考えます。この領域における熱の出入りは、流束の面積分を取ればいいわけです。ここで領域から出ていく流束 = 領域を細かく区切った各体積から流出する流束の正味量になるので、ガウスの発散定理を適用し
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となることがわかります(マイナスがないので正確にはこれは熱の「入り」に関する方程式になっているといえますが、マイナスは両辺につきますからあってもなくても一緒なのでここでは省略してあります)。偏微分方程式に手を付ける段階でベクトル解析に未着手という方はそれほどいないと思うので、ここではベクトル解析関連の説明は最小限にしています。用語が分からない場合、かなり長編ですがここから確認して下さい
 ここで、
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とします。あくまで流束、つまり外向きに出て行こうとしている量は「マイナスの」K∇u です。そもそも勾配は増加方向を向いているベクトルだからですね。この Qin(t) は、ある時刻 t における熱の流入量を表しています。流入量と流出量は裏返しの関係なので、それにマイナスがついたことでプラス K∇u になっています。なぜ発散定理を使って体積分表記にしたかは理由があります。3次元なので、熱量の総量も体積分によって表すことができます。例えば質量の密度が ρ(r) だったなら、その体積分で質量が表せるように、3 次元空間なので、任意の体積 V 内に存在する熱量は体積分で表記できる、というわけです。考え方もほぼ質量と同じです。これも物理的な定義になるのですが、熱量は比熱を c、質量を m 、温度が T のとき
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で与えられます。比熱は1度上昇のために必要な熱量を意味していて、定数とは限りませんが、手計算でやるような問題は大体定数です。体積分で表記する時は微小体積 dV を使うので、この質量の部分は例によって密度 ρ(r) とあわせて ρdV と表記され、結局熱量の合計は
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と表記できることがわかります。この式は位置によって積分されているので時間のみの関数 Q(t) です。また勾配の時と似たややこしい議論の繰り返しになりますが、dQ/dt は総熱量の変化量で、増加する向きの量を意味します。したがって、この dQ/dt はその時間に入ってくる熱量を意味します。これは先ほどの Qin(t) と一致しなければなりません。この手の立式は連続の方程式と呼ばれていて、電磁気学など他の分野でも全く同じパターンの式の立て方が出てくるので、楽するために理解をしておきましょう。ベクトル解析を使わないでも導出できますが、そうすると計算が複雑になります。以上から
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ここでなぜ発散定理を使ったかがはっきりしたのではないでしょうか。体積分が = でつながったため、かっこの中を等しいとしますが、右辺で温度 u 以外は時間に依存していないとすることで、∂u/∂t と積分の中に入れることが可能です。
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このような式が導かれました。ここで注目すべきなのが、K は一般に定数ではないということです。伝導率は密度同様に一様とは限りません。これは位置の変数になり得るので、そうなると外側の∇がきいてきます。このように偏微分方程式の導出の際には、∇・(K∇u) といった形の表記がしばしば出現します。この後紹介する波動方程式も同様の表記が出てきます。もし一様だと仮定すれば非常に簡単に表記できて、
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と表記できることが分かります。これが一般の座標系における熱伝導方程式です。もし1次元であれば、ただちに
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が得られます。導出方法は一回分かれば忘れても問題ありません。この方程式は至る所で出てくるので結果の式だけ知っておくと便利です。

双曲型: 1次元波動方程式の導出

波動方程式は文字通り伝搬する波を方程式にした結果得られるものです。関数y(x,t)に対して、次のような形をしています。別にu(x,t)でもいいですがここでは2次元平面における「高さ」の意味があるためyにしました。
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それこそ波が関わる多くの現象を元に導出が可能なのですが、一番特別な知識を必要としないと思われる方法で今回は導出します。それが弦の振動です。これは運動方程式で導出できます。簡単のため弦のパラメータは全部定数ということにします。
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まず、図としてこのようなものを書ける必要があります。弦の振動は、変位をyとし、位置xと時間tの2変数関数です。したがってy(x,t)が求めるべき関数、というのが第一歩ですね。 次の一歩として、弦をモデル化します。弦を弾くと上下に揺れるのですが、変位はまばらです。そこで図のように細かく区切ります。太いのがその区切りです。 そうして区切られた弦の細分には、両端に同じだけの張力Tが働きます。隣の区切りでも同じようなバランスで張力がかかっているので、大きな視点で見れば結果的には糸の内側の張力同士は実質打ち消され、両端に等しく張力がかかっているように扱えます。また、変位はまばらであるため、左右の小片も何らかの異なった変位を持ってつながっているはずです。したがってかなり大げさに図のように書きました。角度も違うので、それぞれの角度をθ1、θ2としています。
 ここからちょっとしたトリックを使っていきます。物理の世界ではおなじみですが、近似という手法のことです。その前に変位yについての方程式を作りたいので、なんとか方程式を立てましょう。まず思い浮かぶのは運動方程式でしょう。yを従属変数としたいので、y方向の力の釣り合いで運動方程式を立てればよいことがわかります。力ですが、図より Tsinθ がy方向の張力です。したがって以下の方程式が作れることがわかります。
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時間微分ですが、変位yは2変数関数なので記号が偏微分となります。mはこの小片の質量を意味しています。しかし、これは微小区間で立てた方程式ですので、そのままmとして進めるわけにはいきません。mを弦固有の定数や今取っている細分のパラメータで言い換える必要があります。具体的な置き方ですが、この弦の密度(線密度)をλとおくことで、長さΔsとかけあわせ
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とします。次に困る点は角度です。角度も同様にその瞬間その瞬間、しかも小片の場所ごとにバラバラのはずなので、同じようにθを含む項を何か図の他のもので表現する必要があります。 そこで近似の登場です。ここで1つ条件を付けるわけですが、次のように設定します。「弦の振動は十分小さい」(θはほぼ0に近い)ということです。確かに弦を弾いても、目に見えて飛び跳ねるものを見たことはありません。こうなると何をしたいのか分かると思いますが、sinθをθに置き換えることができるようになります。物理でも、振り子の時勝手に角度を小さいとして同じことをやっていたかと思いますので、詳しくはその辺を思い出して下さい。覚えていない場合は、次のように考えると早いでしょう。sinθをテイラー展開して、θを微小とすると、第一次のθ以外は全部高次微小量で消滅するという、という考えです。以上から、運動方程式は次のところまで変形できることがわかります。
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力学を全くやっていないとこの辺の近似のやり方が理不尽に見えるかもしれません。そう見える場合は単振り子などでこの手の近似に慣れておくことをお勧めします。次に、sinは外れても角度は残ったままなので、これを弦の小片のパラメータで置き換えます。角度θは非常に小さいため、sinθだけでなくtanθとも等しくなります。テイラー展開によりsinθ≒θとできることは分かりました。同等に、cosθをテイラー展開して全く同じことを適用すると1になります。つまり、tanθはsinθ/cosθ=θ/1=θという近似が効くわけです。以上よりθが小さい時
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が成り立ちます。こうするともう簡単です。なぜならタンジェントとは傾きのことであり、それはつまりx方向に少し進んだ時のyの増加量を意味するので、この場合は∂y/∂xのことです。tanθ1とは、x座標が図のxの場所の時の∂y/∂xを意味します。tanθ2は、x+Δxの座標にいる時の∂y/∂xのことです。したがって
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が成り立ちます。この辺りまで来ると目的を見失っているかもしれませんが、波動方程式で足りないのはあとyのx2階偏微分です。この式はあとΔxで割って極限を取ればxの2階偏微分になることに注目をしてください。微分方程式を導出するというのは、ある関数f(x)があったとして、
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をどうにかしてひねり出すことが目標なのです。そこを念頭に置けばこうやって変形してきた経緯も理解できると思います。以上より
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までは導出できたことにしましょう。あとは両辺適当に割れば、それらしいものが出てくることが自然と分かります。
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T/λはどっちも定数というお約束にしたのでこれをaの2乗とすれば終了です(2乗とおかなくても別に問題ないですが、実用的な形にしたときルートが登場するため、そうならないように波動方程式のここは2乗になっています)。最後の欠けたピースはΔsです。これがΔxになれば、微分の定義となるのでΔx→0のもとで波動方程式が導出されます。実はこれはΔxとおけます。角度が十分小さいと仮定したため、図は分かりやすいようあからさまに角度を付けてありますが、ほぼ角度がないも同然だからです。微小とはそういうことです。したがって角度が小さいという仮定のもとではΔsは曲がっておらず直線も同然なのでΔxとしてよくなります。この辺の近似の嵐はインチキに見えるかもしれませんが、慣れるしかありません。熱伝導方程式同様、受け入れがたい場合は結果だけ覚えても良いです。以上より
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が得られました。2次元以上の空間だと熱伝導方程式同様、空間微分がラプラシアンに変化します。

楕円型: 1次元ラプラス方程式の導出

ラプラス方程式とは、次のような方程式を言います。
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これは楕円型方程式の代表選手です。そして導出は一番簡単です。なぜなら上記方程式で時間変化がないとしたとき(定常状態)の状況を表す方程式だからです。例えば2次元だったら
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が導出すべき方程式になります。熱伝導方程式は
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と表すことができました。ここで2次元の場合は
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と書けますが、定常状態ではどうでしょう。定常状態とは、時間が十分に経過(t→∞)し、それ以上時間が変化しなくなった状況のことを意味します。つまり時間微分しても時間変化しないため0となり、関数も時間依存してu=u(x,y,t)だったものが時間に依存しなくなりu=u(x,y)となることを意味します。以上から、定常状態では
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ということになります。熱伝導方程式に当てはめれば、十分時間が経った後の温度分布を示した方程式だと言えます。

有限区間1次元熱伝導方程式の解法

実際偏微分方程式とはどう解いていったらいいものなのでしょうか。ここでは上の代表選手3人に最も単純な場合の境界条件を付け、それぞれ変数分離法を適用し、解が得られることを確認しましょう。まずは1次元の熱伝導方程式
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からです。変数分離法の手法とは、かなり勝手ですが解である関数をその独立変数のみの関数の積で表示できると仮定して、常微分方程式複数個に分離させる手法でした。矛盾が見つかっていないため正しいということですが、本当にそう置いて正当な解が出てくるのか確認です。その際には、どうしても境界条件の設定が必要になってきます(そうでないと解を絞り込めない)ので、ここでは次の境界条件を設定します。
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棒の長さは有限(長さL)で、両端の温度が0だということを意味しています。本当は温度は0でない場合でも解けるのですが、変数分離法は同次線形境界条件と呼ばれる、読んで字のごとく上のように右辺が0になるようなタイプでないと適用できません。つまり0でない場合は同次線形境界条件に変換するための細工が必要になります。そこを追求するとかなりスペースを使う上に些細な問題であるのでここでは省略し、常に境界条件は右辺0とします。まずは基本から掴むことにしましょう。
 まず、u=u(x,t)であるため、xのみの関数X(x)とtのみの関数T(t)の積であることを仮定します。
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実際に、元の方程式に代入しましょう。偏微分ですが、上のように分離しているため、x微分にとってtは定数なのでXのみ微分されます。Xはxのみの1変数関数なのでこのx微分は常微分に化けます。同様にtについても適用すればややこしい偏微分はいなくなるというわけです。まずそのまま代入して
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になるのがわかります。次に偏微分は微分する変数以外に対しては効かないので、x微分におけるt、t微分におけるxは定数扱いされ
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となることがわかります。
 次に、片方の辺はある変数のみ、もう片方はまた別の変数のみという風に変形できるはずです。実際、両辺をaXTで割れば
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で、左辺はxのみ、右辺はtのみの関数で分離できていることがわかります(aは定数なので関係ない)。 割るのは別にaXTでなくてもいいと思うかもしれません。確かにそうですが、テクニックとしてこう割ることをお勧めします。この後の手順を進んでいけばよく分かると思うのですが、分子をこのように係数等を伴わない微分された関数のみにしておくと、常微分方程式に分離したとき綺麗な形になるからです。
 左辺はxのみ、右辺はtのみの関数になりました。それぞれ独立に動かせる変数なのに、これらが等しいというのは、両辺共に変数と等しくなければあり得ないことです。これが変数分離法の常套手段なので、必ず体感して覚えておくようにしましょう。したがって、その定数を次のようにおきます。
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またここで馴染みのないやり方が登場しているので注意しましょう。今後そうでない場合も出てきますが、まずここは負の定数で置くのが基本です。しかも2乗を使って、マイナスかける定数の2乗とします。2乗にするのは意味があって、2階微分ということは2階常微分方程式が登場します。そうなると特性方程式が出てきます。2乗でなければルートが必須になってしまうことがわかります。また、2乗は必ずプラスですので、それにマイナスがつくことで常にマイナスであることを表記でき、わざわざ負の定数などと注意書きしなくても分かってもらえるので見た目上親切です。ここは0でもプラスでもいいではないかと思うかもしれませんが、実際に検証していけばマイナスしかあり得ないことが分かってきます。要するに定数部分はマイナスと置かないと、「物理的にあり得ない解」というものが出てくるのです。その辺についても注意しながら、とりあえず上の式のように置いて進めてみましょう。そうすると、次に
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の2つの常微分方程式に分離できることが分かります。
 ここで、なぜ定数をマイナスλの2乗と置いたのかを調べてみましょう。上の方の方程式に注目してください。これは特性方程式が負になるパターンなので、解はcosとsinの和になることを既に知っていると思います。具体的に定数を正、0、負とした場合のX(x)の方程式を列挙します。
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それぞれ、2階常微分方程式の定番パターンなので、詳しい解き方は書きません。[4]の問題が解けるのであれば、そのまま答えが出せるはずです。
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それぞれの場合について検討していきましょう。定数が正、つまり一番上の解であった場合、境界条件を適用すると
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となることがわかります。この解は一体どうなるのでしょうか。それは簡単です。多くの方がきらいと思われる線形代数の用語でいえば自明な解、つまりA1もA2も0となるしかありません。A1もA2を決定するための連立方程式だと見てください。クラメールの公式と呼ばれる手法があったと思いますが、その場合、右辺が0だと行列式も0になってしまうことがわかります。クラメールの公式が思い出せない場合でも、正直に上式からA1=-A2とすればA1=A2=0しかないのが分かると思います。X(x)=0ということは、u(x,t)=X(x)T(t)=0です。これは、偏微分方程式の解u自体が自明な解になることを意味し、物理的に意味を持たない解です。両端の温度が0だったとしても、真ん中が熱かったら少なくとも最初の時点は棒全体が0になるはずはないでしょう。したがって、定数を正と置くと正しい解が得られなくなるため、正とは置けません。
 0の場合も全く同様です。こちらはただの算数で、境界条件を同様に代入してただちにA1=A2=0が得られることがわかります。つまりこれも自明な解になってしまいます。やはりこの定数は0と置くこともできません。
 以上より、定数は正や0の場合、uが自明な解になるほかないため、負と置かなければならないということになります。そこで改めて
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のセット、つまり定数がマイナスλの2乗という負の値であったときのもので考えます。このときは自明な解ではないものがちゃんと存在するので、順番に調べていきましょう。
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正直に代入した結果、こうです。一見他のパターンに似ていますが、違います。確かにA1は0になるしかありません。そこで下側にその結果を適用すれば、最終的に
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が得られることが分かります。これはA2は必ずしも0になる必要はないということに注目しましょう。なぜなら、A2が0にならなくても、sinの中身が0になれるからです。sinの中身が0、±π、±2π…の場合には、値が0になります。したがって、この定数λは完全に任意というわけではなく、
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という制限が付くことが分かります。値が飛び飛びになるという事実に注目をしてください。また、変数分離法の最初の段階で、負の定数とおきましたが、λ自体は実数です。実数なら2乗してマイナスを付ければ必ずマイナスになります。負になるのはマイナスλの2乗全体としてであって、λ自体は負になっても問題ないということにも改めて注目しましょう。以上から、
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という結果が得られました。これで、解が
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に定まりました。
 次にT(t)の方程式を見ます。これはtの1階常微分方程式に過ぎません。解をeの累乗と仮定して代入すれば解けます(Xの方程式では省略しましたが、それと全く同じ手法です)。指数関数は微分しても形が変わらないため、両辺に同じ指数関数が残り、両辺をその指数関数で割ることで取り除けて、ただの代数方程式が得られます。
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とおいて、pを求めたいわけです。これを代入すると
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という方程式になりますが、累乗は両辺共通なので取り除いて
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を得ます。これより、任意定数をつけて
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であることがわかりました。ここでλは既に定まっているため代入して
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が得られます。これで解は
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と定まります。任意定数はAとBの積をCとおきなおしました。上記境界条件のもとではこれが答えです。このうえに初期条件が加わることで、さらに任意定数Cが定まることになりますが、少なくともこの時点で分かることとして、熱伝導方程式は時間によって指数関数的に0に近づいていくというのが挙げられます。次の項を見ていけば分かりますが、波動方程式ではこのような減衰項は現れません。
 これが偏微分方程式の解き方の流れです。手順は決まり切っていて、変数分離法で常微分方程式に分離させ、その時おいた定数を得られた常微分方程式と境界条件を考慮することによって限定します。それがSturm-Liouville問題と呼ばれる微分方程式の特徴です。この問題の場合、微分方程式の階数と同じだけの任意定数とは別に、今回のλのような定数が混じった方程式になりますが、境界条件を当てはめることでλが必ず離散的な値として限定できます。Sturm-Liouville問題には
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というややこしい定義がありますが、このサイトでこれから考える、偏微分方程式を変数分離して得られる2階の常微分方程式は全てこの問題です。

有限区間1次元波動方程式の解法

今度は波動方程式にも挑戦します。先に書きましたが、こちらは熱伝導方程式と違って減衰する要素(指数関数)が登場しないという違いがあります。それは時間微分が2階微分になっていることによるものです。やはり同次線形境界条件の設定が必要になるので、熱伝導方程式同様、有限区間ということにして問題に挑みましょう。
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波動方程式は弦の振動から導出できました。その見方でいくと、両端が0という条件は、いわゆる「固定端」という条件に相当します。
 最初に、求める関数y(x,t)をX(x)とT(t)の積とします。
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元の方程式に代入します。
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偏微分に関係ない方の変数は定数のように前に出せるので
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次に (xのみの式)=(tのみの式) を作り上げ、右辺左辺で変数を分離させます。この際、常微分方程式になることを見越して最高階数(ここではX''とT'')に係数がつかないようにしておくことが鉄則です。要するに、それによって後で得られる常微分方程式が標準形(見やすく、解きやすい形)になります。
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左辺はxのみ、右辺はtのみの式です。それぞれ独立に動かせる独立変数なので、それが等しいと言うことは両辺は定数に他なりません。そこで両辺をマイナスλの2乗(負の数)とします。λは実数です。これは熱伝導方程式の時と全く一緒で、負でなければなりません。理由は全く同じで、式も境界条件も先ほどと全く一緒なので検証するのは省略します。
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以上から、偏微分方程式は2つの常微分方程式に変換されます。
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境界条件がないとλに縛りを入れられませんので、ここでは境界条件を付けたxから手を付けていきます。見て分かると思いますが熱伝導方程式と全く一緒な式で、境界条件も同じものです。X(x)の微分方程式の一般解は最も典型的な形なので暗記していると思いますが
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です。境界条件を適用しましょう。といっても先ほどと一緒です。
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これより、
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が得られることが分かります。やはり自明な解以外のものが存在し、それはsinが0になるときで
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という制限が付くことが分かります。2度目になりますが、負になるのはマイナスλの2乗全体としてであって、λ自体は負になっても問題ないので、こうする必要があります。λが定まったので
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という結果が得られ、X(x)の方程式の解は
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です。
 一方でT(t)の方程式もX(x)の方程式と全く同じ形をしています。aの2乗がくっついてるだけなので、そのままλxとなっていたところをaλtとして終わりです。
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λは既に定まっているため、次のように直すことができます。
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これでX(x)T(t)が定まったので
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を得ますが、任意定数の積もまた任意定数なので、AはBと統合してまとめることができ
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が答えです。ここでは特に初期条件(t=0の弦の形や、はじき方による初速)を指定していないため、任意定数が残っています。

1次元ラプラス方程式の解法

2次元方程式の解法

今回のまとめ

A1. 1次元熱伝導方程式(1次元より上の場合x微分がラプラシアンに)
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A2. 1次元波動方程式(1次元より上の場合x微分がラプラシアンに)
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A3. 2次元ラプラス方程式(一般にはラプラシアン=0の形)
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